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【カルテの書き方】総合プロブレム方式とは。

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前回の記事で、「カルテの書き方」の基本「Problem Oriented Medical Record」について紹介しました。

「カルテ書いてみて」と言われても迷わない。【大学では習わないカルテの書き方】
大学では学ばない・習わないけど、医師として重要な業務 には色々あります。 前回は、「症例プレゼン」について記事にしました。 今回はその第二弾。 「カルテの書き方」 についてです。 ...

今回は、その続編という形で、「総合プロブレム方式」を紹介します。

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まえがき

担当患者さんのカルテを読んで、

「この患者さん、あちこちの科にかかっていろんな治療をされてるみたい。色々書いてあるけど、カルテも膨大、書き方もバラバラで、結局どんな患者さんなのかわかりにくいなぁ・・・」

と思われたこと、絶対にあるはずです。

学生は悪く言えばオブザーバーの域を脱しませんから、「患者さんの医学的問題の全体像がわかりにくい」という状況のままでもそれが診療の効率やクオリティに影響することはありません。しかし、将来医師として働く上ではこの状況は許されません。

真面目に情報を集めようとすれば、ただでさえ忙しい中で膨大な時間を浪費することになるし、一方で情報収集の努力を妥協すれば情報の把握不足による診療クオリティの低下をきたします。

そういう悩みを解決することができる一つのツールが「総合プロブレム方式」です。

これに則る形で診療・カルテ記載を行うことで、専門化・細分化の進んだ現代医療においても、効率的な情報共有、全人的医療の提供を達成する一助となります。

更に、「総合プロブレム方式」は専門各科にとっても、より良い診療を可能にします。

是非多くの方に「総合プロブレム方式」を知っていただき、実践に移して頂くことで、医療職お互いがwin-winの関係を築けると思います。

患者さんは複数の疾病を持ち得る

「Problem Oriented Medical Records」について紹介した前記事では、一人の患者さんについて、複数の医学的問題が存在しうることを紹介しました。

例えば、

<65歳男性>

#1 高血圧症

#2 脂質異常症

#3 2型糖尿病

#4 陳旧性心筋梗塞

#5 肺癌(左上葉切除後)

などという形で、患者さんは複数の疾病を持ち得るのです。

医学の細分化・専門化が著しい現代の医学では、この患者さんに対して複数のスペシャリストが介入するということも紹介しました。

例えば、上記の例でいえば、

循環器内科▶高血圧症、陳旧性心筋梗塞

内分泌内科▶脂質異常症、2型糖尿病

呼吸器外科▶肺癌(左上葉切除後)

などという形です。

総合病院では、一人の患者さんが同じ日にあちこちの診療科に外来でかかる姿も珍しくありませんね。

医学の細分化・専門化の問題点

もちろん、各プロブレムについてそれぞれの領域のスペシャリストが診療を行うことは、より高度・繊細な医療を提供する上で重要なことであり、今後もこのシステムが継続されるでしょう。

しかしながら、このシステム下ではどうしても「その患者さん全体を診る姿勢が失われやすい」という問題点に気をつけなければなりません。

具体的には、

  • 新たな疾病に気づかれにくい
  • プロブレムごとの関連が見落とされやすい
  • 患者自身がどこで何を話せばよいかわかりづらい

などが挙げられます。

例えば上述の例について、以下のシナリオを御覧ください。


患者さん(65歳・男性)は「高血圧」「脂質異常症」「糖尿病」「心筋梗塞」「肺癌術後」それぞれについて一つの総合病院で外来フォローされていますが、前回の受診から今回までに、新たに「腰痛」を感じるようになりました。

患者さんはわざわざ整形外科に行くのも面倒なので、どこかの診療科で相談してみようと考えますが、どこでそれを訴えるべきか迷います。

「腰が痛いのは年齢によるものかな」と思い、「高血圧は年齢によるものですよ」と説明されていた循環器内科で「歳のせいか最近腰が痛むんだよね」と相談してみました。

循環器内科外来では最近勤務体制の変更があり、新しい医師がこの患者さんの外来フォローを行うことになっていました。

多数の高血圧フォローの患者が押し寄せ、各患者の全診療科のカルテを確認しながら診療するだけの十分な時間がない中、この患者さんが珍しい降圧薬を使っていることから高血圧のフォロー経過を確認することばかりに気を取られてしまいました。

結果として、呼吸器内科を受診している理由が肺癌術後フォロー目的であることまで追い切ることができず、「腰が痛いのはおっしゃるように歳のせいかもしれませんね・・・」と済ませてしまいました。

患者さんとしても「やっぱり歳か」と納得して湿布を貼って様子をみることにしましたが、腰痛はどんどん悪化し、3ヶ月後になって肺癌の腰椎転移が見つかってしまいました。


世の中の「診断の遅れ」はこういったスイスチーズモデル的に様々な要因が重なって起こります。

上記は稚拙な例かもしれませんが、医学の細分化・専門化によって、「患者さん全体を診る」という姿勢が失われやすいことはイメージいただけたかと思います。

総合プロブレム方式で協力体制を!

だからといって、患者さん全員が、「総合内科」「総合診療科」的な診療科にかかって、各プロブレム全体のマネジメントを行うという医療形態は現実的ではありません。

そのような中にあって、「患者さんのプロブレム全体を診る」ために有用なカルテ記載方式が、「総合プロブレム方式」です。

総合プロブレム方式は、複数の疾病を持つ患者さんの状況を医学的な問題点(プロブレム)として整理し、それぞれのプロブレムごとに考察・治療・カルテ記載等を行っていくという診療形態です。

このように聞くと、特に目新しいシステムではないように感じますが、「総合プロブレム方式」には患者さんを全人的に診療するための「ルール」が存在します。

総合プロブレム方式のルール例

例えば、プロブレム番号(プロブレムナンバー)について。

総合病院のカルテを見ると、「#」がテキトーに使われている例が結構散見されます。

循環器内科医のカルテは「#高血圧 #陳旧性心筋梗塞」のみについて記載があったりとか、呼吸器外科のカルテには「#肺癌術後」のみについて記載があったりとか。

各科主に診療する領域が異なるので、プロブレム毎にその診療科としての重みが違うのも当然です。

しかしながら、これではその患者さんがどのような問題を抱えているのか把握するのが難しくなります。

初診・入院といった情報整理が必要な場面で、このように情報が錯綜していては、「全人的な医療」を達成することが難しいばかりか、働き手の医療者も情報収集に苦戦し。労力を費やすことになることは目に見えています。

そこで「総合プロブレム方式」では、どの医療者がみてもその患者さんのプロブレムを把握しやすいように、「診断日順」でプロブレムナンバーを振っていくことをルールとしています。

また、各プロブレムごとの関係や、プロブレムの変遷などについてもルールを定め、誰が見ても患者さんの医学的問題の変遷を把握しやすいように工夫しています。

総合プロブレム方式の各科でのメリット

総合プロブレム方式のメリットは、「情報共有」や「全人的診療」というだけには留まりません。

各プロブレムについて、考察・診療していく上でも、SOAP方式とあいまったこの「総合プロブレム方式」は大きな力を発揮します。

「この患者さんは何の疾病か」ではなく、「この患者さんにはいくつ疾病があるか」ということを考えた上で、各疾病(プロブレム)について考察を深めていくことで、様々なバイアスに左右されないより客観的な考察が可能となるのです。

総合プロブレム方式の入門書

このブログで「総合プロブレム方式」についてルールやメリットを詳述することは難しいので、いくつか書籍を紹介します。

患者さんの全人的診療のためのみならず、医療者の働きやすさ・情報共有のクオリティ向上のために

是非たくさんの方に読んでいただき、実践していただきたいと思います。

カルテはこう書け!

メインはカルテの書き方についてではありますが、後述の「『型』が身につく」よりも「総合プロブレム方式」について詳細に説明があります。

総合プロブレム方式のルールやメリットについて重きを置いて知りたい方は是非こちらをどうぞ。

「型」が身につくカルテの書き方

上述の「カルテはこう書け!」よりさらにカルテの記載方法にフォーカスした書籍です。

実践的な内容を多く含み、一読で十分即戦力になります。

もちろんカルテの記載方法は「総合プロブレム方式」に則った形で紹介されています。

10病院以上研修病院に見学に行きましたが、どの病院でも必ず研修医の本棚にある一冊です。

まとめ

より多くの方が「総合プロブレム方式」を知り、実践されることで、患者・医療者の双方にとって良い環境を作ることができるよう、是非協力しましょう!

 

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