※この記事はシリーズ「USMLE STEP1 合格体験記」の一部です。
この記事では基礎知識として日本と米国での医学教育・医師養成課程の相違点をまとめます。
日本で医師になるには・・・?
まずは日本で医師になる方法をおさらいし、後に米国の場合と比較していきましょう。
日本で医師になるためには、主に以下のようなステップを踏む必要があります。
- 高校を卒業
- 大学の医学部または医科大学を卒業(6年制)
- 主に在籍4年目にCBT・OSCEと呼ばれる試験に合格
- 6年目に医師国家試験に合格
- 厚生労働省「医籍」に登録
※医籍:医師版の戸籍のようなものです。
さらにその後、「専門医」としていわゆる一人前の医師になるためには、
- 2年間の卒後臨床研修(いわゆる初期研修)―様々な診療科をローテート
- 各人が志望する専門に応じた研修・経験・症例の蓄積(いわゆる後期研修)
- 専門医試験への合格(試験のほか、症例数等を加味)
以上の過程を経ることで、「専門医」として診療を行うことが可能です。
※ちなみに、今まではこの「専門医」は各学会主導の仕組みでしたが、まさに今この制度を共通の機関による制度としようという「新専門医制度」が発足しつつありますね。
実は、現行の制度上では、医学部卒業後2年間の卒後臨床研修を行えば、医師は何科の看板を掲げても良いことになっています(麻酔科を除く)。ただし、臨床医を目指すほとんどの医師はその後後期研修を行って、専門医を取得していきます。
米国で医師になるには・・・?
一方、米国で医師になるためにはどのようなステップを踏むのでしょうか。
- 高校を卒業
- 一般の4年制大学を卒業(医学問わず生物学・科学等の基礎教養の習得)
- メディカルスクール(医学部)を卒業しMedical Doctorとなる(4年制)
- 主に在籍2年目にUSMLE STEP1をPASS
- 主に在籍4年目にUSMLE STEP2CKおよびCSをPASS
- インターンシップ(1-2年)―様々な科をローテート
- 1年経過前後でUSMLE STEP 3をPASS
- 州ごとの医師登録(各州で診療に携わるための資格)
- レジデンシー:一般内科・一般外科等、専門領域の基礎となる領域に特化した研修。
- フェローシップ:「呼吸器内科」「心臓血管外科」など、さらに専門性を追求するための研修。
以上が多くの人が通るステップです。州ごとに制度が異なりますので一例となっております。
インターンシップ、レジデンシー、フェローシップ等に入職するためには、研修先機関を決定するためにマッチング(いわゆる就活)が必要で、人気プログラムでは熾烈な争いとなります。この競争要素として、USMLEにおける成績はもちろんのこと、メディカルスクールでの成績や研究の実績、推薦者の文章等も考慮されます。
日本と比較した場合の米国の医学教育の特徴
これらから、米国の医学教育・医師養成過程の特徴は日本と比較して以下のようにまとめられます。
学生である期間が長い
米国では病院で働き出す前に2つの大学(一般大学+メディカルスクール)を卒業しています。つまり、米国での医学部最終学年というのは年齢的には日本の研修医2年目あたるわけです。しかも米国の臨床実習はより参加型の要素が強いとも聞きます。米国の最終学年の学生は、充実した実習で養った豊富な臨床知識で2CKを受験することになります。
資格試験の得点が如実に就職活動に影響する
日本では、「国家試験は合格さえしてしまえばキャリアには問題ない」ということがほとんどですが、米国では研修先を決定する上でUSMLEのスコアが大きな要素となってきます。特にSTEP1はその比重が重く、米国の医学生は必死対策するようです。
医師免許は州ごとで付与
日本においては医師は国家資格であり、日本中どこでも医業(診療)を行えますが、米国ではこの資格は州ごとになっています。
医師となるための資格試験が何段階もある
日本では一度「医師国家試験」に合格し、医籍を獲得すれば「医師」と名乗り、制度上ほとんどの診療行為を行うことができます。一方で、米国では厳密に州に認められた「医師」と胸を張るためには卒業後も研修が必要です。多くの州が、免許を与えるためにUSMLE STEP 3までの合格を要件の一つとしているようです。
専門医制度が統一
日本の学会ごとの専門医制度とは異なり、米国では既に統一機関による専門医制度が発達しています。
ここまでの知識を知っておくと、これ以降の説明も頭に入りやすくなると思います。
(※この記事はシリーズ「USMLE STEP1 合格体験記」の一部です。)
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