筆者はUSMLE STEP1、STEP2 CKいずれも経験していますが、今回は受験当日に求められる体力・集中力について書きます。
試験成績=当日までの努力量✕当日の実力発揮能力
試験は何事も「当日のパフォーマンス」が最も重要です。
試験を受験するまでの対策や準備よりも、当日のパフォーマンスが重要といっても過言ではありません。
試験の成績は、
「試験当日までに養った知識量や努力量」
と、
「試験当日にその実力を発揮できるか否か」
というファクタで構成されます。
両者は全くの別問題であり、試験結果はその積によって決まることに注意が必要です。
例として、
100点の能力を持っている人が、実力の50%を発揮しても50点にしかなりませんが、
80点の能力を持っている人が、実力の90%を発揮すれば、72点を獲得することができます。
USMLEの試験形態
USMLEの受験形態をご存知でしょうか。
STEP1であれば、トータル8時間を使って、以下のように配分します。
- チュートリアル:15分
- 試験本体:1時間(約40問)✕7ブロック
残りの時間はセット間の休憩に当てます。その配分は受験者に委ねられます。
試験形態の詳細は以下の記事も参考にしてください。
STEP2 CKは、ブロック数が1つ増え、トータル9時間での試験になります。
体力面・精神面でめっちゃしんどい
試験形態だけを見てもその体力面・精神面での辛さが伺えるところかとは思いますが、現実はそれより更に厳しいものです。
試験時間が長い・休憩が短い
上記の時間割を見て頂ければ一目瞭然です。
STEP1であれば、1日8時間の試験で、うち休憩時間は45分のみ。残りの7時間15分は集中しなければならないということです。
休憩の時間配分は自由ですが、ブロックの途中での離席は不正とみなされますので、1時間の中では気を抜くことができません。
時間割設定に余裕がある医師国家試験とは大違いです。
問題文も長い・解答時間が短い
問題を読んでみた方ならわかると思いますが、結構な長さの長文を英語で読解することを永遠に繰り返さなければなりません。
1時間で約40問ですので、1問にかけられる時間は1分半。
この時間内に、問題文と解答選択肢全てに目を通し、正答を選ばなければならないのです。
この観点でも、1問にかけられる時間に比較的余裕を持てる医師国家試験とは比にならないスピード感を求められます。
CBTである
試験中は、PCがたくさん並んでいる試験ルームに閉じ込められ、画面とにらめっこしなければなりません。
1日8時間に渡りPC画面上の文章を読み続けるというのは、よく考えれば異常な状況です。
試験場の問題
上述の通り、PCルーム内での受験となります。持ち込みが許されるのは基本的にパスポートとロッカーの鍵のみです。
休憩時間は試験室外に出ることができますが、入退室には手続きが必要です。
入室時には手荷物検査(金属探知機など)、本人確認(指紋)、署名を
退室時には本人確認(指紋)、署名を
求められるため、結構面倒な上、そのときにも刻々と休憩時間を消費しています。
加えて、試験室内では、USMLE以外の試験を受験している方々が複数いらっしゃる場合がほとんどです。
試験によってはタイピングを行うものもあるようで、「カタカタ」という音や、他の受験者の出入りの音などで集中力を削がれないようにしなければなりません。
(大阪中津のプロメトリックでは一応防音用のヘッドフォンが準備されていました。)
緊張する
試験までの勉強を頑張れば頑張るほど受験当日はそれを発揮できるかと緊張が増すでしょう。
自宅などリラックスできる場での問題演習とは異なるため、解答による疲労は普段の何倍にもなるでしょう。
体力・集中力を鍛えましょう
巷の情報では、受験までの対策(知識量・努力量)という面にどうしてもフォーカスが向きがちです。
しかし、上述の通り、いくら当日までの勉強を頑張ったとしても、それを発揮する能力がなければ満足いく結果は得られません。
受験までの勉強量と同等に、受験当日のための体力・集中力作りや、受験当日の受験環境を整えることが重要です。
実力を発揮するために普段からできること
ある程度勉強が進んでいる方なら、何より本番のしんどさを経験してみることです。金銭的に余裕があれば、模試を2つ続けて受験してみるという手が最も手頃かもしれません。NBMEにしろ、UWSAにしろ、一つの模試は4ブロックからなります。1日でこの模試を2セット分やってみると、如何にUSMLEが過酷な試験か理解できると思います。
これで「案外大丈夫だ」となればそのまま勉強を継続すれば良いでしょうし、「集中力が続かない」と自覚すれば、本番のパフォーマンスを高める工夫をする必要があるでしょう。
また、USMLE対策の基本は「問題演習」になると思います。このやり方を工夫するだけでも結果が違ってくると思います。
オンライン問題集は、解答時間、正答表示のタイミングなどを設定できるものがほとんどです。
本番を想定するという意味では、「40問・60分・正答は一番最後にまとめて表示」で設定するのがベストでしょう。未知の問題40題と対面し、60分でどのように戦っていくか、ブロック毎に経験を蓄積していく必要があります。
「1問1分30秒を守ればいいでしょ?すぐ解答解説を見られた方が学習効率高いし」というご意見もあるでしょう。ごもっともなのですが、本番においてはsnap diagnosis的にkey wordを一つみただけで正答を選べる問題から、文献読解の問題をはじめとして明らかに1.5分以上時間がかかる問題まで幅広い出題となります。
前者が1分30秒以内に解答できたからといって全く安心はできず、必ず同じブロック内の他の問題とのバランスが重要になってくるのです。
確かに、解答解説を解答直後に見て復習する方が学習効率は高くなるという方もいると思います。その場合は、このやり方と本番想定の演習をうまい配分で組み合わせると良いでしょう。
例えば、初見の問題を解くタイミングでは本番想定モードで解答すべきでしょう。一度解いた問題は当然解答時間が短くなり、本番のハラハラ感を味わえません。2周目以降の問題については、解答後すぐ答え合わせをする形で学習効率を高めるのに使った方が良いかもしれません。
実力を発揮するために受験前日・当日にできること
試験前日は余裕を持って生活することをオススメします。試験場は日本では東京または大阪に限定されます。当日は朝早くに会場にチェックインしなければなりませんので、遠方の方は近くのホテルに前泊するなどして、しっかり休養をとると良いでしょう。
体調を整えるという意味では、胃腸を含めてしっかりいたわる必要があるでしょう。上述の通り、休憩時間の時間配分は自由ですが、ブロック間は試験を中断することができません。途中でお手洗いに行きたくなって集中を削がれないように注意が必要です。
同様の意味で、朝からの飲水には注意が必要だと思います。脱水になるのも問題ですが、水分を摂りすぎてトイレが近くなるのも困りものです。筆者は緊張すると無意識に飲水励行してしまう癖がありましたので気をつけました。
休憩時間は自由に飲食できます。試験場を出て購入しに行くことも不可能ではないですが、会場の控室は飲食が可能ですので、予め食料を買っておくべきです。ガッツリ弁当などでも悪くないのですが、食後どうしても眠くなります。筆者はおにぎり、サンドイッチ、カロリーメイト、チョコレートなどなど、お手洗いに行くついでにぱぱっと食べられるものを選んで準備しておきました。
あとは当日の服装でしょうか。意外に盲点ですが、ポケットが多かったり、身に付けているものがシンプルでないと、試験室入室時の身体検査で毎回時間を食うことになります。最初の入室時に写真撮影がありますので、あまりにもラフだとちょっとあれかもしれませんが、しかしシンプルな装いを心がける方が良いと思います。
上記と同時に、一応試験室内は快適な温度に設定されていましたが、必要に応じて体温調節できる服装にしておくと良いかと思います。
あとは、USMLE受験者は荷物ロッカーへのアクセスは自由です。問題を対外的に漏洩する行為を除いては、試験室外で休憩をする分には何をしても良いことになっています。各自でリラックスする手段をお持ちの方は、休憩用にこれを持参されるのも手かと思います。
まとめ
以上、USMLE受験に際しては、当日までの対策と同等またはそれ以上に、本番で実力を発揮できるか否かが重要になります。
現時点で筆者が思いつく限りを述べましたが、その他質問がありましたら、CONTACTよりお尋ねください。
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