筆者が医学部に入って最も驚いたことのひとつは、「とにかく覚えることが多い」ということです。
基礎系の科目の試験もそうだし、CBTでも実習でも国家試験でもとにかく「知っているか?覚えているか?」という問題や質問の連続です。
そんな医学部において、効率よく暗記・知識の蓄積を行っていく方法についてお伝えします。
暗記を放棄すればよい
私自身、毎日押し寄せてくる「覚えるべきこと」の波になんとか対応していたときもあったのですが、これがなかなか覚えられない。
もちろん、単に暗記するより、根底にある考え方をしっかり学んだ上で、覚えるべきことは覚えるという形の方が、記憶に定着する可能性は高いということはわかっていたので、そのように勉強していました。
しかし、全ての知識を上記のように印象付ければ、各知識の印象は相対的に低下し、結局覚えられないという自体に陥るのです。
例えば、何らかの疾患の病態生理を勉強して、そのときや勉強したてのときはその疾患の病態生理が手に取るように分かると思います。しかし、普段頻繁に想起する知識ではないため、1週間もすればその記憶は薄れ、1ヶ月もすれば勉強前の知識に後戻りということもザラではないでしょう。
そして、再度その知識が必要となった際には、初めて勉強したときと同じ道筋を再び辿って調べ、想起することになるのです。
私はいろいろ考えた挙げ句、暗記を放棄しました。
そして、その労力の一部を記録媒体に投げたのです。
もちろん、理屈抜きに覚えなければならないこと、瞬時に想起できねばならないことなどはちゃんと覚えます。
しかし、日進月歩の医学です。勉強することがどんどん増えていく中で、1から10まで覚えるのは不可能に近いと腹をくくり、勉強したことをわかりやすくまとめておいて、いつでも引き出せるような仕組みを作ってしまえば良いのではないかと考えたのです。
まとめノートの作り方のコツ
基本は学校で使うノートと同じ
私の「まとめノート」の原点は、CBTの勉強をしていた際に問題を解きながらまとめていたルーズリーフをたくさんファイルしたものです。
一度勉強したことを記録しておくことで、それを復習するときや忘れたときに参照し、「あぁ、そうだったな」と思い出すための記録です。
上述の通り、単に知識を羅列していくだけでなく、その根底にある概念や考え方も含めてまとめていくことで、記憶の定着を図りました。
学校の授業・講義の際に板書をするノートとほぼ同じだと思います。
ゴロを頻用する
「今後は記憶は機械が、思考は人間が担う時代だ」とはいえ、常識として覚えておかなければならないほか、世の中にはいわゆる「暗記ゲー」と言われるような試験も存在します。
また、私は記憶力がそれほど優れないため「ゴロ」を頻用しています。ゴロを書き残しておく場所も、この「まとめノート」でした。
自分で作ったものから、インターネット・書籍で知ったものまで、覚えたいものはどんどん該当の項目に加えるようにしていました。
特に、USMLE STEP1はどれだけ暗記したかが如実にスコアに反映されるため、ゴロは欠かせませんでした。
調べた過程も記録に残す
私は、この「まとめノート」にもう一つ役割を担ってもらうよう意識していました。
それは、「最初に勉強した当時の思考過程を記録媒体に再現してもらう」ということです。
人間忘れるのは仕方ない。だからこそノートに知識を保存しているのですが、いざ忘れたときにノートのその知識を見ても、断片的な情報しか得られないことがあります。
というのは、その勉強をしていた当時は当たり前だった概念や考え方ごと忘れてしまっていることがあるからです。
したがって、せっかくノートに知識をまとめておいても、結局復習のときには「これなんだっけ」ということで再度教科書やインターネットで調べていかなければならないという無駄な時間を使うことになってしまいます。
私はこういう時間がもったいなくて嫌いだったため、初めて勉強したときに、再びそのページを見ることを見越して、その知識を理解していく過程ごと残すように努めました。
もちろん初めて勉強するときはより時間がかかってしまうのですが、忘れてしまったときに復習する際には大幅に時間を短縮できるため重宝しています。
アクセス性を担保する
ここまでで問題なのは、ふと「あそこにまとめたこと何だったかな?」と思ったときに、さっと調べられない点です。
ルーズリーフやノートにまとめておくのは良いのですが、いつもいつもそれらを持ち運ぶのは難しいです。
仮に持ち運んだとしても、目当ての記載にたどり着くまでにはアナログでは時間がかかってしまいます。
そこで私はまとめノートをデジタル化することにしました。最終的にはEvernoteに落ち着くのですが、最初はMicrosoft Wordを使っていました。
最大のメリットはキーワードでの検索が可能であること、データとしてスマホやタブレットに保存し、いつでも持ち歩いたり修正したりできる点です。
加筆修正できるようにする
紙媒体でまとめて他に困ることは、加筆修正が難しい点です。
まとめたことが誤っていて修正しなければならない場合や、同一の項目についてさらに勉強して加筆したい場合、ルーズリーフやノートでは困難で、どうしても加筆修正したければ新しく書き直す必要があり非効率です。
また、紙媒体では例えば問題演習した順でまとめていくことを余儀なくされ、テーマごとに分けてということが難しくなります。仮にテーマごと(例えば循環器、消化器、・・・)に分類できたとしても、その中にも様々なテーマが存在し、これらを体系的に並べておくことは難しいです。
これに比べ、デジタル化してあれば、加筆修正は自由自在ですし、テーマごとの整理整頓が可能になります。
また、実習をはじめ、断片的に知識を得ることも少なくないと思います。こういった場合にも、自分の知識が体系的にまとめられた骨組みがあれば、断片的な知識を付け加えていくことが可能です。
まとめノート最終形態:Evernote Premium
私はまとめノートとしてEvernoteを利用しています。
先述の通り、最初はルーズリーフをファイリングしていく形で始まったのですが、デジタル化の利点に気づき、全ての知識をたった一つのWordファイルにまとめるようになりました。
その後サイズが大きくなりすぎて編集や検索等に支障が出るようになり、項目ごとにノートを作成できるEvernoteに白羽の矢が立ったのです。
さらに、画像だけでなく、PDFやPPTXなどのファイルもノート上に保存しておくことができることもメリットです。調べた中で出てきたガイドラインなどの勉強ソースをこちらに保存していつでもアクセスできるようにしておくことも可能です。
Evernoteはもちろん無料でも十分な機能を提供してくれるのですが、筆者はPremium版を購読しています。
メリットとして、1ヶ月のアップロード量の上限を10GBまで引き上げることで、十分データを残していけるようにできるほか、1つのノートのデータ上限も200MBと十分です。
また、スマホやタブレットのアプリ、PCのアプリも含め、アクセスできる端末は無制限です。(通常は2つまで)
さらに、ノートの内容に合わせて関連ノートを自動的に表示してくれるなどのメリットもあります。
最も重宝しているのはやはり検索機能で、PDFや画像などの添付ファイル内の文字も認識して検索に表示してくれるため、楽に過去まとめた内容にアクセスできます。
Evernoteを利用されるならPremiumがオススメです。
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まとめノートの内容
筆者は目次用のノートと、まとめ用のノートの2種類を作っています。
目次用のノートは消化器、循環器、糖尿病・代謝・内分泌、呼吸器、・・・などと、臓器や診療科別に作成し、各まとめノートに飛べる内部リンクを貼っています。
「〇〇科について体系的に復習したい」とか、「〇〇についてまとめたノートってあったっけ?」というときに、この目次用のノートから参照するようにしています。
一方、まとめ用のノートはまとめの本体で、各疾患や症候ごとに項目を作成し、勉強したことやゴロなどを蓄積していっています。
※筆者は「自分でまとめた」ということに意味があると考えています。他人に共有してもらったものも、勉強のソースとしては良いかもしれませんが、自分の知識を系統的に集約しておく場所としては向きません。ここでノートの内容を公開することは控えますが、当ブログやTwitter、LINE@を通してご連絡いただければ、参考として一部をお見せすることは可能です。(CONTACT)
学生の勉強だけでなく臨床研修でも活かす
個人的にはこのノートは一生大切に使っていく予定です。
研修医として臨床研修を行う間も、ふと「あの薬、どういう機序だったっけ?」「あの疾患の病態生理を忘れてしまった」的な疑問は尽きないと思います。
そんなときに、学生時代から付き合ってきたノートが手元にあるのは大変心強いことだと思います。
また、研修していく中で得た知識もここに加筆していく予定です。
おそらく毎日様々な分野の知識を断片的に学ぶことになるでしょうから、自分専用に体系的に知識をまとめてあるノートがあると、ここに加筆していけるため便利です。
まとめ
「覚えること・知識の蓄積はコンピュータに任せて、人間はそれらを利用する中で、人間にしかできない仕事を担っていく」という時代に突入することは必至です。
確かに医学は思考の前提として常識として覚えて置かなければならない知識が他の分野よりは多いでしょうが、この時代の流れのなかにあって例外ではありません。
正直、学生に求められるレベルであっても勉強項目が増大し、人間のキャパシティでは覚えきれないところへ向かいつつあり、やはりそういったことの記憶は機械に任せ、その知識を活用して思考する部分がますます重要になってくると感じています。
2018年度の医師国家試験も、その流れを如実に反映するものでした。
自分の知識を体系的にまとめたノートを作っておくことで、国試等の試験対策だけでなく、研修医として実地にでた場合に得た断片的な知識や、勉強会などで得た知識を蓄えておくプラットフォームとして活用することも見越し、是非自分専用の知識集約の場所を持っておくことをオススメします。
※万が一サービスに何らかの障害が生じたときに慌てずに済むよう、「定期的にバックアップをとっておく」ということが非常に重要です。この意味でも電子媒体は強いです。一方紙媒体は全てコピーして保存しておくことは現実的でなく、紛失などに非常に弱いです。
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