※この記事は、シリーズ「低学年からのCBT対策のススメ」の一部です。
このシリーズでは、「医学部に入ったからには早く臨床医学も勉強したい!」という要望を尊重し、その要望を知識に変える手助けができればと記事にして参りました。
今回は、そのモチベーションの高さをCBT対策に留めることなく、その先の学習に活かしていくことの大切さについて紹介します。
なぜ低学年からのCBT対策を勧めるか
私は、低学年こそその無知を自覚し、医学の輪郭を掴むために熱心に勉強すべきだと思っています。
また、「鉄は早いうちに打て」ではないですが、「医学部生として早く医学っぽい勉強がしたい!」という気持ちがあるならば、それが様々な楽しみに埋没する前に勉強することもよりよい転帰を生むように思います。
こういったニーズを満たすために、CBTの勉強がうってつけであることは以前の記事でも紹介した通りです。
中には、低学年の学生が臨床医学も含めて熱心に勉強していることに対して、好意的には思わない上級生や医師がいることも事実ですが、そんなことは全く気にする必要はありません。
(基礎医学を学ぶことを軽視する意図は決してありません。むしろ、臨床医学を早期に学ぶことで、基礎医学自体や基礎医学と臨床医学のつながりを理解しやすくなるのではと考えています。)
ここで、強調したいことは、CBTレベルの知識など、今後習得していかなければならない知識のごく一部であるということです。
もちろんその知識を構築していく中での基盤となる部分に該当するため、重要であることは間違いありませんが、その先にはまだまだ勉強しなければならないこと、勉強しておくと良いことがたくさん存在するのもまた事実なのです。
せっかくCBTの出題範囲について低学年から熱心に勉強したのであれば、そのアドバンテージを是非次に活かすと良いのではと思います。
CBTの先にあるもの
ここでは、CBT対策を終えた後に、そのアドバンテージを活用すべきものをいくつか紹介します。
医師国家試験
日本で医師となるためには、厚生労働省が実施する医師国家試験に合格しなければなりません。(下記参照)
多くの学生が、CBTに合格後、その開放感もあって勉強を中断したり、勉強量を減らしてしまいます。国家試験が目に見えてきた頃、再びエンジンをかけたときにはCBTの知識も抜けてそこから勉強しなければならない状況に陥るのです。
折角CBTの勉強をしたならその知識を失わないうちに、国家試験の勉強に突入すると、より効率よく知識を吸収できるのは明確です。
最も簡単で効果的な勉強方法は、解説のついた過去問集(初学の場合は診療科別に問題がまとめられたもの)を解きながら、知識を吸収していく方法です。
筆者は、後述するUSMLE STEP1の対策の一貫で、CBTと国家試験の勉強を実施しました。是非以下の記事も参考にしていただければと思います。
初期臨床研修医として必要な知識←重要!!!
「医師国家試験に合格すれば、医師として一人前に働くことができる。」と思ったら大間違いです!
医師国家試験は、医師として最低限の知識を問う試験であり、合格したからといって臨床の場でどんどん活躍できるものではありあせん。
医師国家試験では「この疾患の症状はAとBとCがあります」といった疾患ごとの知識が主に問われます。これはもちろん医師として働く上で基盤となる重要な知識です。
しかし、医師として臨床の場で問われる知識は、「XとYとZのような症状を呈しているこの患者の疾患は何が考えられ、それを確定するためにどんな検査をしなければならないか?」といった実用的なものであり、これらはなかなか医師国家試験で問うことができません。
これだけでも十分理解して頂けると思いますが、医師国家試験の成績が良かったからといって、臨床の場で優秀な働きができるとは限らないのです。
学生の間に勉強することと、医師になってから必要とされることには、このように幾分か解離がありますので、(もちろん医師国家試験に耐えうる十分な基礎知識を得た上での話となりますが、)学生の間に実用的な知識まで勉強しておくと、初期研修がより充実したものとできるように感じます。
勉強の方法としては、実習やチュートリアル等の実症例を大切に勉強したり、研修医向けの書籍を使って勉強するなどがあるでしょう。
※医師国家試験は、徐々に研修医として必要とされる実用的な知識を問うような傾向に変化しつつあるのも事実です。下の記事を参照してください。
USMLE
日本人の少子高齢化・日本の人口減少に伴って、今後ますます重要となるのが、「英語力」です。
そこで、英語✕医学を学べる素晴らしいソースが、「United States Medical Licensing Examination」です。よく「米国医師国家試験」という和訳を与えられます。
米国で医師となるために受験しなければならない試験ですが、日本人医学生でも受験することが認められています。
中にはUSMLE受験を視野に入れたカリキュラムを設定する日本の医学部・医科大学もちらほら現れ始めているようですし、日本の医学生の間での認知度が上昇し、実際に受験する人も増えているように感じます。
筆者も、5年生でSTEP1に合格し、執筆現在はSTEP2 CKの勉強中です。
USMLEの詳細を含めて、以下のシリーズを是非ご覧ください。
その他
世の中、勉強すべきことは医学のみではありません。日本人、とくに多忙な医療者が疎いとされる資産運用をはじめとした自身に直結することから、自身を取り巻く社会についてまで、学ぶべきことはたくさんあるでしょう。
医学部での勉強に対する不安が払拭されれば、これらに視野を広げることも容易になると思います。
まとめ
以上、CBTの勉強を早く終えた先には、国試をはじめとするさらなる勉強や、初期臨床研修を見据えた実用的な知識の習得など、学ばなければならないことはたくさんあります。
また、医学や医療とは直接関係内容に思える事柄について視野を広げられることも、社会に出る上で重要なのではないでしょうか。そのためには「時間」が必要です。
先を見据えて余裕をもった勉強・生活をするためにも、是非その駆け出し・基礎であるCBTの勉強を早期に頑張ることが大切です。
※この記事は、シリーズ「低学年からのCBT対策のススメ」の一部です。
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