※この記事はシリーズ「医師国試Q&A」の一部です。
筆者が合格してもいない国試対策等について独断と偏見に基づき(笑)Q&A方式で意見を披露していく「医師国試Q&A」の第一弾です。
今回頂いたご質問は、
ビデオ講座は取られましたか?
取られている場合、どのように活用されていますか?
または、取られていない場合、どのように勉強をされていますか?
というものです。
ビデオ講座/映像授業不要論
「不要」と断言すると方方より総スカンをくらいそうではありますが、実際ビデオ講座・映像授業はとらなくたって何ら問題ないと思っていることは本当です。
確かに使い方によっては便利な勉強材料となることは事実ですが、それ以上に長期的な視点で危険な一面もあると考えています。
「国試は周りと同じことをやっていれば大丈夫」!?
そもそもなぜこれだけビデオ講座/映像授業が市民権を得ているのかを考えると、周りが何らかのビデオ講座/映像授業をやっているから、「自分もやらねば」というモチベーションや危機感を抱いてビデオ講座/映像授業を購入する医学生が非常に多いからであるというのは容易に推察できます。
根底にあるのは、「医師国家試験は周りと同じ勉強をしていれば大丈夫」という考え方でしょう。
医師国家試験合格基準の仕組みとして、
- 必修問題:正答率80%以上
- 一般&臨床実地問題:相対基準により合格ラインを決定
- 禁忌選択数:3問以下
といった条件を満たすと合格をいただけるような形となっており、一般問題・臨床実地問題については、その年の受験生の出来を勘案して基準が決定されるようで、相対評価的な側面も否めません。
毎年合格率は90%程度ですから、国試受験生が残り10%に入らないための勉強に走ることは当然のように思います。その一環として、「みんながやっているから、先輩がやっていたから、自分もビデオ講座/映像授業をとって勉強しよう」という思考に至るのでしょう。
もちろん皆がビデオ講座・映像授業という同じ勉強方法を共有する上で生じるメリットも複数あります。
- 勉強内容について同級生と教え合ったり、確認し合ったり、議論したりしやすくなる。
- 各種予備校が作成する講座内容は国家試験合格で問われる内容を網羅的に扱っており、偏りなく学習できる。
- 勉強が多角化して、知識の抜けを補充できる。
- 臨床現場の視点も交えて学ぶことができる。
- 講師の面白い話、視覚・音声による刺激で印象に残りやすい。
- 机上で勉強していると疎くなりがちな最新の医学に関する動向・出題予想をまとめて知ることができる。
などなど。
ビデオ講座/映像授業を完全に否定しているわけではありません。
画一化にうなずけない
しかし、「周りと同じ勉強をしておけばOK」という考え方への全面的な賛成はしかねます。
現在の「ビデオ講座/映像授業至上主義」ともいえる状況は、大げさに言えば受験生の画一化を生みうると思います。
知識の上での「画一化」もありますが、医学生の学習習慣が「受動的な学び」へと画一化される事態を招きかねないのではないかと思うのです。極端かもしれませんが、知らず知らずのうちに、
「周りがやっていることはやる」という考えは、「周りがやっていないこと・必要以上のことはやらない」
「人に教えてもらうことが医学の勉強だ」
となるやもしれません。
確かに教えてもらう方が効率は良いかもしれませんが、要点のみつまんでちゃちゃっと勉強する感じでは学問的には少しさみしいです。
何より、医師として働きだしてから、目前の患者さんそれぞれの問題についてわかりやすく教えてくれるビデオ講座などないし、「指導医」は手取り足取り教えてくれる講師ではありません。
私は学生の間から、問題や症例に基づき自分で調べ吟味し知識にしていく姿勢をより大切にすると良いと思っています。受動的学習であるビデオ講座・映像授業へ依存することはこの妨げになる可能性があるので注意が必要でしょう。
「周りと同じ」では不安は消えない。
加えて、「周りと同じことをやっていれば大丈夫」という勉強を主軸としていては、「これで合格できるだろうか?」という不安は消えないかも知れません。
「Aくんはこれだけやっている」、「Bさんはこれも勉強している」「Cくんはあれを受講している」、「予備校の講師がこう言っていた」、「この予備校は最近評判が悪い」、「あの講座はダメと聞いた」などなどと考えていれば、永遠に国試合格に対する不安が尽きないのは当然のことでしょう。
受験生が乗り越えなければならないのは、厚生労働省が求めている「医師になるにあたり最低限求められている知識」の習得です。
計画的に、危なげなく、不安なく国家試験に合格したいならば、勉強の基準を、「映像授業・ビデオ講座」「周りがどれだけ勉強しているか」といった二次情報ではなく、「実際に出題された医師国家試験の問題(=厚生労働省の要求する知識レベル)に対して、自らがどの程度の到達度であるか」という一次情報に求めては如何でしょうか。
「この講座だけみっちり勉強すれば大丈夫!」「効率が良い!」という考えに翻弄されないようにしましょう。
医学生が主体的に学ぶ方法を知らぬわけがない
先に述べたように、ビデオ講座/映像授業の全てを否定するわけではありません。医師国家試験に必要な最低限の知識を効率よく網羅的に学習できるし、そのための学習指針を得られます。また、「知らなかった」という知識もよく出てくるし、馴染みのない臨床現場でのお話なども、大変勉強になります。
ここで主張したいのは、
「ビデオ講座・映像授業なんてやめてしまえ!」
ということではなく、
「ビデオ講座・映像授業」を勉強の主軸にしたり、これへの依存度をあまりにも高めるのはもったいないのではないか・・・ということです。
そもそも一般に難関と言われる医学部入試を乗り越えてきたような方々が、「医師国家試験に合格するための勉強の仕方がわからない」ということがあるでしょうか。
国試合格ということだけを考えるならば、勉強すべきことは非常に明確なはずです。
医師国家試験の問題・合格基準は毎年厚生労働省からご丁寧に公表され、解答・解説もインターネットや書籍を通して安価に手に入れられる時代となりました。
これらに一通り目を通して対策方法を考えられない医学部生などいない(いてもごく少数)であると思います。
自ら医師国家試験全体を研究し、自分の不足している知識を抽出していくことは一見仕事量が多いようにも見えますが、最初に国試の全体像をつかむことで、自らに不足しているものを分析し、それに特化した効率の良い勉強法を見出すことができるはずです。
いずれ、ほとんどの問題に根拠を持って答えられる程度には医師国家試験の全体像を把握しなければならないのですから最初にその苦労を買っておけば良いのです。
各種予備校の作成する医師国家試験対策のメイン講座は、各疾患の病態・重要事項を流しで確認し、問題を解いていくという形態がほとんどを占めます。限られた時間の中で全体に触れなければならないため内容に抑揚はつきにくく、眠くなるのも当然です。
決して安価ではないビデオ講座/映像授業を購入してこれを主軸とする勉強については、ラクをして国家試験の知識を効率よく網羅的に勉強しているように見えて、実は医学生のようなポテンシャルの高い集団、特にある程度臨床の知識を得た高学年の医学生にとっては逆に遠回りだったりするのではないでしょうか。
挙句の果て、「この講座は〇〇だからダメだ」「この先生は△△だからダメだ」では他力本願も甚だしいのではないでしょうか。
医師国家試験対策は、自ら医学を学び取りに行く姿勢・方法を養うための数少ないチャンス・足がかりだと思います。学びの効率を求めることと同じかそれ以上に、医学的な情報収集(文献検索など)とそれを吟味する習慣は大切であり、これを身につける良い機会だと思います。
まとめ【ビデオ講座/映像授業の活用方法】
じゃあビデオ講座/映像授業をどのように活用したら良いの?という話ですが、
筆者が考えるに、まず
「国家試験の勉強の主軸を、ビデオ講座や映像授業でなく、自ら課題を持ち主体的に学んでいく姿勢に置くこと」
が重要であると考えます。
こうすることで、「国試」という枠組みにとらわれずに深い勉強もしやすくなるし、実際に臨床の場で働き出してから、目前の患者さんの問題について調べるときの構図にも似ています。(国試は通過点に過ぎません。)
さらには臨床実習を大切にすることにもつながると思います。実習の合間をぬってはビデオ・映像を視聴している方も目にしますが、実習で診させていただいた実際の患者さんに関することで自ら課題を見つけて勉強する方が、なによりの刺激となって記憶に定着するはずです。
その上で、
- 特定の分野の講義:全体像を掴みにくい科目。学習成果が上がらない科目はこれら講義に頼る価値はあるでしょう。
- 模試とその解説授業:本番の緊張感を持って受験し、復習することは重要なことですので各種予備校のコンテンツが活用できます。
- Up Dateされた講義:医学生が疎くなりがちな最新の医学知見のうち国家試験に出題されそうなものの情報を一手に集めるのはビデオ講座が得策かもしれません。
- 国試直前の講義:High Yieldな出題事項の最終確認として、時間をかけずに復習できるメリットは享受すべきかもしれません。
といったところを中心にビデオ講座/映像授業を活用するのが良いのではないかと思います。
さらにその上で、
- 金銭的余裕がある
- 普段の自学とは別の勉強ソースも使って多角的に勉強したい
という方が、「その手段の一つとしてビデオ講座/映像授業を網羅的にやってみる」とするのはいかがでしょうか。
医学生の端くれの一意見ですので、多くの方の意見や実際の講義をご覧になって決めるべきかとは思いますが、以上をその一つの材料として参考にしていただければ幸いです。
以下の記事も参考にどうぞ。
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