「これからの御時世、英語大事だよなぁ」と考えている人は多いと思いますが、英語の勉強はなかなか長続きしないものです。
「強い信念で毎日コツコツ勉強だ!」という精神論もありますが、やはり楽しみつつ勉強できるに越したことはありません。
今回は医療に関わる人にとっては医学も英語も勉強できて一石二鳥、そうでない方でも楽しみながら英会話を勉強できるドラマをご紹介します。
ER緊急救命室
私が一押しするドラマは「ER 緊急救命室」です。
アメリカで一世を風靡したほか、日本でも幾度も放送され、ご存知の方も多いと思います。ある総合病院のER(Emergency Room)を舞台に、Emergency physicianや外傷外科医、ERナース、救命救急士のER診療と人間ドラマを描いたシリーズドラマです。
医療にフォーカスしている
医療ドラマは、「医療ドラマ」的側面と「人間ドラマ」的側面に分けられます。
昨今の多くの医療ドラマは「人間ドラマ」に重点が置かれることが多く、筆者としては少し寂しい気持ちになるのですが、ER 緊急救命室は、医療に対するフォーカスがかなり大きい点で、他の医療ドラマとは一線を画しています。
救急隊から患者情報が無線で伝えられ、ERに搬送されてきて、処置室へ。患者の頭側にERドクターが立ち、テキパキと指示を出しながら、患者の周りを医療者が囲み、それぞれが治療を開始し、専門各科やオペ室へ移送する様がかなりリアルに描かれてるのです。
気管挿管や胸腔穿刺、心嚢穿刺からルート確保まで、上級医が研修医や学生に教える様も現実そのものです。
上述のように、描写的な部分はもちろんですが、ストーリー展開的にも医療要素が強い部分が多いです。
昨今の本邦の医療ドラマは「人間ドラマ」的である一方で、ER 緊急救命室では、例えば「心筋梗塞のある症例について、薬物治療がよかったのか、外科的介入よかったのか、ということを巡って議論が勃発し、各々が専門的に意見を衝突させる」といった場面があるなど、医学的視点もしっかり取り入れられています。
視聴しながら、各疾患の診断・治療について気になったことがあれば調べることで、勉強になったりもします。
例えば「長期間続く発熱、リンパ節腫脹、眼球結膜が充血していていイチゴ舌ときたら、これはKawasaki diseaseじゃないか」的な一幕があり、不意を打たれたことがありました。
また、術中に学生が「カローの三角は何で構成されるか」と質問を投げられたり、新任の研修医が「シャルコーの三徴は?」などと問われている場面があったりして、筆者が自分の解剖書を引っ張り出してきたこともありました(笑)
こういった形で、楽しんで見る部分と、医療者的な目線で見る部分とがちょうど良いバランスで織り交ぜられている、とくに後者の考証がしっかりしており、ボリュームも大きいという点が、このドラマが魅力的だと思う所以です。
専門用語がバンバン飛び交う
臨床現場で用いられる専門用語が遠慮なしにバンバン飛び交います。
“人間ドラマ”に重きを置いたドラマでは、必然的に疾患や病態を題材にした話題は避けられることになりますが、ことER緊急救命室については、”医療”の側面にも重きを置いたドラマのため、専門用語の乱発に関しては本当に遠慮がありません。これもまた面白いのです。
略語なども幅広く用いられています。筆者は「CPA」くらいは知っていたのですが、「TKO」「NS」「GSW」「MVA」など最初は何のとやらわからず、Web検索片手に視聴していました。(※)
米国でも日本でも人気だったようですので、もちろん医学に詳しくない方でも楽しめるのでしょうが、医療者的な目線ではその面白さは倍増です。
※
- CPA=Cardiopulmonary arrest:心肺停止
- TKO=To Keep vein Open:後の薬物治療を想定してとりあえず静脈ルートをとっておくこと
- NS=Normal Saline:生理食塩水
- GSW=GunShot Wound:銃創、銃弾による外傷
- MVA=Motor Vehicle Accident:自動車事故
次話への期待・考えさせられる
一応、一話完結という形でみても面白いは面白いのですが、登場人物も多く話題に尽きないため、シリーズ25話すべて見ると面白さが倍増します。
というか、1話見るとその先の話の行方が気になって次話を見てしまうような構成になっています。
英語をドラマで勉強する人にとって、「面白さ」「持続可能性」というのは大変重要なファクターだと思いますが、このドラマではそれが実現されています。
医学的にも人間ドラマ的にも面白く、先も気になるという至れり尽くせりのドラマというわけです。監督すごいです。
また、考えさせられることも多くあります。
第一に、ERで働く研修医に数年後の自分の姿を重ねて、「もっと勉強せねば」と危機感を覚えることが多いです。
また、「bad newsをどのように伝えるか」「AIDSや性感染症」「身近な人の死」「ターミナルケア」「認知症と介護」「低所得者と医療」といった、臨床倫理的な側面を持つ話題も織り交ぜられています。シナリオも実際にありそうなリアルな感じです。
将来自分が同じ立場だったらどう考え行動するだろうか、そのために今の自分にはどんな知識が不足しているだろうか、といった指標を得ることができる点も、私がこのドラマが好きな点のひとつです。
DVD版なら英語字幕付き
英語でドラマを視聴する上で重要なのがその再生環境です。
ER 緊急救命室は、その人気だけあって、日本版のDVDが発売されています。
私が購入したDVD(下記)では、字幕も音声も日本語+英語の2言語で収録されていました。
これらをうまくミックスして視聴することで、Listeningが致命的に苦手な私であっても、適度な負荷で勉強することができ重宝しています。
視聴のしかた
ドラマで英語を勉強する方法は巷にたくさん流布していますので、そちらを参考にしていただくと良いかと思いますが、以下のような感じで視聴しています。(実はまだ全シリーズ制覇していません・・・)
- 基本的には英語字幕+英語音声で再生
- 知らない単語やフレーズは調べてメモ(Ankiを利用)
- 文脈がわからなければ日本語字幕or日本語音声を利用
- 疲れたら日本語字幕+日本語音声で楽しむ
- 疾患が出てきたらその場面に応じて勉強してみる
舞台がERだけあってテンポも早く、私の英語力では英語字幕なしでは全然聞き取れませんし、日本語にしないと文脈を理解できないことも多々あります。
娯楽的要素もあるので、あまりナーバスにはならず、日本語字幕や日本語音声に頼ってしまうようにしています。
が、ERを英語で見る前に比べれば、格段に聞く耳が育ったように思いますし、机上で勉強した医学の知識が臨床的イメージに結びついてより強い記憶になる実感があります。
視聴手段(NEW!)
DVD購入
普段はドラマDVDなど目もくれない筆者ですが、ERだけは1stシーズンをレンタルで見て、全巻欲しくなってしまいました。
やや値は張ったのですが、ラストシーズンの放映からははや10年が経過しており、将来品切れで視聴できないとなっては一生後悔が残ると思い、思い切ってお得な15シーズン全巻まるごとのセットをポチってしまいました。
DVD版のメリットは、英語字幕がついていること。上述の方法を使ってListening力アップに利用できます。
この素晴らしい作品を永遠に自分のものにできてしまうのも魅力です(笑)
Amazon Prime VideoにERがやってきた!
2020年1月追記です。
ついにAmazon Prime VideoにERがやってきました!
Amazon Primeは学生なら非常にリーズナブルな価格で利用できるほか、6ヶ月の無料体験もあります。
英語字幕は出ませんが、DVDを購入することを思えば非常に安価です。
是非利用してみてください!
Amazon Prime Videoに
まとめ
「ER 緊急救命室」は、英語と医学をまるごと楽しく勉強でき、おまけに色々なことを考えさせられるドラマです。
世界中どこを探してもこれほどリアルで完成度が高い医療ドラマはないと感じています。
読者の皆様も、1stシーズンを視聴していただくだけでも、その面白さに引き込まれることでしょう!
コメント