※この記事は、シリーズ「低学年からのCBT対策のススメ」の一部です。
今回は、本格的にCBTの対策を始める前に、最低限理解しておくべき内容を紹介します。
感覚的に、CBTの出題の7-8割は臨床の知識を問うものです。
「CBTの勉強をすることは、臨床医学の勉強をすること。」
「臨床医学の勉強をしたければ、CBTの勉強を!」
と言っても過言ではありません。
一方で、CBTの勉強をする、もっと言えば、CBTの問題演習に取り組んで効率よく知識を吸収していくためには、前提となる知識が必要となるのも事実です。
そして、その多くは基礎医学の領域の知識です。
筆者としては、ほぼ素人状態からのスタートであっても(たとえ1年次であったとしても)、本記事の内容を参考に勉強していただければ、CBTの勉強として問題演習を開始できると考えています。
【その前に】ぶっちゃけいきなりCBTの問題集を解いたっていい!
極論ですが、実際のところ何の前知識もない状態で問題集に取り組んでも無謀ではないと筆者は思っています。
独学で教科書を開いて1ページずつ理解していくことが難しいことは、医学部受験を突破された方ならよくご存知でしょう。
最低限の前提知識があるなら、問題をベースに勉強していったほうが効率的です。
問題を解きつつ、その範囲の中で、CBTではどんなことが重点的に問われるのかも把握することができるし、教科書を無目的にペラペラ読むより、問題意識を持って調べる姿勢の方が、知識が定着しやすいからです。
先にCBTの問題集を開いてみて、あまりにもチンプンカンプンだったら以下の記事を参考にしていただくという形でも良いのかもしれません。
CBT対策を始める前に学んでおくべきこと
そんな理由で、筆者自身は早い段階でCBTの問題演習に移行し、臨床医学の勉強を始めるべきだと思っています。
とはいえ、予め知識を得ることである程度骨格が見えていないと、問題演習の途中で迷子になることも考えられます、
今回は、スムーズに演習にうつるための最低限の学んでおくべきことを紹介したいと思います。
以下がある程度理解できたと思ったら、すばやく問題演習に移行してください。
目安として、問題演習を開始した後に、
「あ、この問題の元になる知識は、あの本のあの章を見たら載ってそうかなぁ・・・」と思えれば基礎知識は十分だと思います。
それぞれオススメの書籍も紹介しますので、是非参考にしてください。
MUST
生理学
生理学はガッツリ勉強しておくことを推奨します
むしろ、「生理学だけやって問題集へ!」でも全然いいと思います。
理由はいくつかあります。
- ヒトがその機能を維持するための仕組みに関する最も基礎的かつ系統的な学問である
- 他の科目を勉強するための基礎、骨組みとなる(基礎医学の他の科目で生理学の基礎知識が広く必要となる)
- 疾患の病態生理(異常のメカニズム)を勉強する上で、正常機能(=生理学)は欠かせない
医学の勉強では既存の知識に継ぎ足し継ぎ足し肉として知識を蓄えていく必要があります。CBTの問題演習はこの作業にあたります。
この「肉付け」をするためには必ず「骨組み」が必要です。その「骨組み」が、生理学の知識であると筆者は考えます。
この観点から、生理学について、少なくとも一冊は系統的かつ内容の薄くない本(成書など)を手にして勉強することが大切です。
オススメの勉強法は、生理学の入門書「生理学テキスト」を通読して全体像を掴みつつ、なんでも書いてある成書「標準生理学」でその知識を深めていく、疑問点を解消していくという勉強法です。
また、生理学の教科書ではありませんが、生理学を含む医学全体を見渡すのには、「Human biology」もオススメの一冊です。
将来USMLE(米国でいう医師国家試験)など英語で医学の勉強を頑張りたいと思っている方は是非日本語版ではなく原著にチャレンジしてみてください。
※医学教育の最初の段階では解剖に大きなフォーカスが当てられる節がありますが、個人的には、医学教育のカリキュラムは生理学から始めるべきだと思っています。是非以下もご覧ください。
ある程度重点的に学んでおくべきこと
解剖学
多くの大学で医学教育の初期に勉強することでしょう。
CBTの勉強を始める上で、カラダの部位の名前を知っておくことは必須ではないと思います。知らなければ調べて自分の知識にすれば良いからです。
ただ、解剖学の知識そのものを問う問題は出題されますし、解剖用語をいちいち調べるのは若干非効率ですので、予めある程度系統的に勉強しておくと良いのではないでしょうか。
オススメはイラスト解剖学です。複雑な位置関係や解剖を覚えるためのゴロが満載で、通読していても飽きません。内容的にも臨床につながる部分が重点的に収録されています。
堅苦しい「解剖書」のイメージを打ち砕く一冊です。
薄い教科書流し読み程度で良いもの
免疫学
基礎領域の中では、現在もアップデートが激しい科目のひとつで、初学者にとっては全体像を理解するにはやや煩雑です。
逆に、一旦全体像や基本が理解できると「暗記」ではなく「思考」で解答できる問題が増える科目でもあります。
余裕があれば是非「休み時間の免疫学」を読んでみてください。単行本よりも薄いくらいの分量ですが、流し読みで免疫学の全体像が理解できます。薄いですが、CBTの免疫の範囲はこれだけでほとんどカバーできると言っても過言ではないです。
微生物学(細菌学・ウイルス学・真菌学・寄生虫学)
上述の通り、生理学を学ぶことで基礎医学の他の科目の知識も広く押さえられるのですが、病原体(細菌、ウイルス、真菌、寄生虫)については、それ自体がまた人間とは異なる個体ですので生理学ではあまり扱われません。
この点で、病原体の性質についてはある程度内容を把握しておくと良いと思います。
「覚える」ということについては問題集を始めてからで良いと思うので、どんな病原体があるか、それらが大雑把にどういう奴らなのかイメージを持っておくと良いと思います。
薬理学
薬理学は「薬の効く仕組み」を学ぶ学問です。この理解には生理学の知識がベースとなるのですが、逆に生理学で薬理学的な知識が取り上げられることは少ないため、別で勉強しておいても良いでしょう。
薬理について細かいことを覚えていくのは後でも良いので、どんな薬の種類があるのか、だいたい全体像を把握しておくと演習で役立ちます。
まとめ
効率よくCBTの勉強をするためのコツは、早々と問題演習に移行し、その中で知識を深めていくことです。
繰り返しになりますが、問題演習をするにあたり、
「あ、この問題の元になる知識は、あの本のあの章を見たら載ってそうかなぁ・・・」と思えれば基礎知識は十分
だと考えます。
「基礎医学の勉強しかしていないのに、CBTの臨床問題解けるの?」と思われるかもしれません。実際、解けません。
が、膨大な臨床的知識をINPUTのみで勉強している(例えば病気がみえるを通読するなど)と、絶対嫌になるときが来ます。どれが標準的知識なのか、何を覚えるべきなのか、CBTでどんな問題が出るのかがわからないままにINPUTのみを継続していると、必ず飽きがくるし、定着も悪いはずです。
この記事で紹介したようなベースを獲得した方は、すばやく問題演習に移行し、臨床問題も含めてどんどん問題を解くと良いと思います。
臨床問題をスラスラ解くのは難しいかもしれませんが、その中で効率的に知識を吸収していけるし、何より臨床問題を解くことの楽しさを味わえると思います。
※この記事は、シリーズ「低学年からのCBT対策のススメ」の一部です。
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