医師国家試験の対策でオススメの教科書は何ですか?
という質問を頂きましたので、簡単に回答したいと思います。
定番「病気がみえる」について
日本の医学生の中で最も所有率の高い教科書はずばり「病気がみえる」でしょう。
「病みえ」とか、一部では「がみえる」と略されることもあるようです。
「病気がみえる」について、筆者の印象を一言でいうと、
「疾患のイメージ・全体像を掴むのには最適」
という感じです。
「病気がみえる」の特徴は、その名の通り、「視覚的に病気を理解できる」という点だと思います。
医学生だけでなく、コメディカルの方々にも頻用されるシリーズで、正常の解剖・生理を図解的に解説した上で、疾患の病態生理、疫学、検査、診断、治療、予後までをわかりやすくカバーしています。
私も、CBT初学の段階で頻用していました。
最近になり、ついにマイナー科も出版が始まりました。
病気がみえたら!?
ところで、筆者は徐々に「病気がみえる」を開く頻度が減り、最近では全く使わなくなったことに気づきました。
意識的に使用する頻度を落としたということは全くなく、自然に利用頻度が落ちていったため、明確な理由はわかりませんが、一旦疾患の全体像・イメージが自分の中で構築され、お役御免になっていったのだと思います。
CBT対策にしろ、国試対策にしろ、初学の段階では「出題される疾患の名前自体初めて聞く」という状況にしばしば陥ります。そんなとき、「病気がみえる」はその疾患の入門として非常に有用です。一方、どんな疾患に出くわしても、「あぁ〜あれね」と既視感を覚えるようになってくると、「病気がみえる」のイラストがちょっとうるさく見えてしまうのではないでしょうか。
もちろん、疾患に馴染んだあとも、「病気がみえる」をフル活用する方法はあるのでしょうが、以下2点を考えるとやっぱり「病気がみえる」から卒業したほうが効率が良いように思えてしまうのです。
- 疾患の一般的事項・全体像に関するイメージが(忘却で)弱まってしまっていたら、幾ページにも渡る「病気がみえる」を読むよりは、Year Noteでササッと見直したほうが早い。
- 疾患のある事柄について詳しく知りたい場合、「病気がみえる」では少し物足りなさを感じるため、成書やUpToDate、(場合によってはそこからたどった論文など)を利用したほうが良い。(知識が深まるのみならず、情報収集・吟味の力も鍛えられる。)
「病気がみえる」の素晴らしさを否定する意図はまったくありませんが、最初から最後までこの一冊に頼るというのは、効率的にも、知識を深める意味でも少しもったいないなと思ってしまうのです。
(多分「病気がみえる」で勉強されることをよく思わない先生方は、こういうことを考えていらっしゃるのではないでしょうか。)
ちなみに、疾患イメージをイラスト主体ではなく、文書主体で学びたい方にとっては、「STEPシリーズ」がおすすめです。但し、出版から少し時間が経ってしまっていることに留意が必要です。
医師国家試験対策のオススメ勉強ソース
Year Note
一旦疾患の全体像・イメージを獲得している人が、そのイメージが薄まったときにざっと知識を呼び戻すのには最適の一冊。
国家試験で出題された知識を基本にまとめてあるところもポイントです。
UpToDate
これを使いこなせればそれ以上のことがないサービスです。
エビデンスに基づいた最新の知識が、系統立てて(教科書のように)まとめられているのが特徴。
もちろん知識のもととなる文献にジャンプすることも可能で実習でも大活躍。
唯一の弱点は「本文が英語であること」です。PCをちょっといじればGoogle翻訳で簡単に日本語表記できるという話もありますが、筆者は英語の勉強も兼ねてそのまま利用しています。
もちろん購読に結構な費用がかかりますが、大学単位で契約しているところも多いようですので一度調べてみてはいかがでしょうか。
文献(論文)を1次情報とするのに対比して、このようなサービスの情報は「2次情報」と呼ばれます。同様の2次情報サービスとして「Dynamed」があります。
その他の勉強ソース
内科・外科については正直上2つで十分だと思いますが、その他のオススメは以下。
必修・禁忌対策
正直、内科・外科の勉強はわざわざ「医師国家試験対策」と銘打って勉強しなくても合格水準に達するものと思うのですが、必修・禁忌については「試験特有の対策」をしっかり行っておきたいところ。
公衆衛生対策
医師国家試験の公衆衛生については、これとこれで十分かと。
その他
問題演習や、ビデオ講座などについては、他の記事を御覧ください。
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