久しぶりの更新です。
今回は、「歯が抜けた」というマイナーエマージェンシーについて勉強しました。
「歯が抜けた」
乳歯が抜けるのは成長の証で喜ばしいことですが、永久歯さんたちとは末永くお付き合いしていきたいものです。
筆者は「永久歯である自分の歯がグラグラになり、ついには抜けてしまう」なんて夢を結構頻繁に、しかもリアルな形で見ることがあるのですが、その時の絶望感といったら・・・
実際に永久歯が抜けた患者さんを診たことはないのですが、今回は万が一そんな状況に陥ったらどのように対応するのが良いのでしょうか。
抜けてしまった永久歯は絶対に〇〇してはいけない!!!
転倒などの外傷で「永久歯が根本から抜けてしまった!!」という状況に陥ったとき、もちろん歯科や口腔外科に救急受診すべきなのですが、それまでの対応としてまず覚えておきたいことが、
絶対にゴシゴシ磨いてはいけない!
ということです。
大抵の場合、屋外でそういうことになることが多いでしょうから、抜けた歯は地面に落ちて汚れることが多いでしょう。汚れた歯をとりあえずきれいに洗いたくなる気持ちは重々わかります。
しかしながら、歯の根本には「歯根膜」という組織があり、これが歯を元の場所に戻す上で非常に重要になるのです。
抜けた永久歯が汚れたからといってゴシゴシ磨いてしまうと、この大切な歯根膜を失い、元の場所に戻すことが難しくなるのです。
加えて、「歯根膜」は人体外の環境に弱い(正確には、歯根膜を構成する細胞が低浸透圧、高浸透圧で損傷しやすい)ため、保存の仕方にも注意が必要です。
抜けてしまった永久歯の保存方法
永久歯が根本から抜けてしまった場合、早急な歯科・口腔外科の受診が望まれ、この時間が短ければ短いほど元の形に戻せる可能性が高まります。
では、医療機関を受診できるまで、どのように保存すればよいのでしょうか。
上述の通り、歯根膜を傷つけないよう、以下の点に注意します。
歯の触り方に注意!
口腔側(太い方)を扱うようにします。やはり根本にある歯根膜に極力触れないようにし、これを保護するためです。
汚れていたら軽く洗い流す
砂がついている場合は、軽く洗い流します。間違ってもゴシゴシ磨いてはなりません。
ベストな保存方法=元の場所に戻す
抜けた永久歯を一時的に保存するのに最も良い手段は、「元の場所」に戻すことです。できる限り元の状態と同じになるように優しく挿入し直し、本人または介助者がこれを保持しながら医療機関に向かいます。
複数本抜けてしまいどれをどこに戻すべきかわからない場合や、口腔内や歯の損傷が激しく二次的に創傷を作る危険がある場合などは、無理は禁物です。
※抜けた歯が乳歯の場合、乳歯を整復する必要はないため元の場所に戻す必要はありません。
保存液に浸すのもOK。日用品でも代用できます。
永久歯を元の場所に戻せない場合は、保存用の液体に浸しますが、こんなものがすぐ手に入るとは思えません。
日用品で代用する場合は、「牛乳」に浸しておくのが良いとされています。
また、牛乳も手に入らない場合は、受傷者自身の唾液を貯め、これに保存しておく方法も良いそうです。
また、以下に注意します。
- 「ただの水」は浸透圧ゼロであり、これに浸しておくと歯根膜の損傷に繋がり推奨されません。
- 受傷者の歯肉と頬粘膜の間に挟んでおくなど、口腔内に飴のように保存する方法もありますが、口腔内を転がして歯根膜を損傷する恐れもあり推奨されない場合もあります。
そしてとにかく早く受診
永久歯が根本から抜けてしまった場合、上記のことに注意しつつ、速やかに医療機関へ向かうようにします。
受診が遅れるほど元通りにできる可能性が低下していきます。
まとめ
永久歯が抜けてしまった場合の注意点を紹介してみました。とにかく歯根膜を守ることが大切のようです。
歯が折れたのみで根本が残っている場合には、受診前にここまでデリケートになる必要はないようですが、いずれにせよできる限り早めの受診が大切です。
勉強ソース:UpToDate
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