※この記事はシリーズ「医師国試Q&A」の一部です。
今回頂いた質問は以下です。
クエスチョンバンク(QB)を解き進めているのですが、解説で覚えたいところをスクリーンショットしたり、ノートにまとめたりしたいと思っています。
良い方法があれば教えていただきたく思います。
この記事では「医師国試Q&A」の第二弾として、医師国家試験の問題集(クエスチョンバンク=QB)を用いた効果的な演習方法をお伝えします。
医師国家試験・問題演習の重要性
世の中には参考書や映像授業など、効果的に国試対策を行うことができるツールが出回っていますが、筆者は、医師国家試験対策で最も重要なことは「問題演習(問題・症例に即した勉強)」に尽きると考えています。
危なげなくいい国家試験に合格するためには、過去10年の医師国家試験で出題された問題全てに地道に解答していく位の心積もりが必要だと思います。
このように申し上げると、「効率が悪い」とおっしゃる方もいらっしゃるかもしれませんが、そのやり方を工夫すれば、地道な問題演習が受験者各々に合った最も効率の良い勉強法になると考えます。
問題演習の重要性についての詳細は、本シリーズの第一弾「ビデオ講座不要論!?」にて記事としていますのでそちらを参照してください。
ここで簡単に要約すると、
①勉強の基準を「周りの人」「映像授業で求められていること」という二次情報に求めているため、どれだけ勉強しても不安が尽きることはない。
②「画一的な知識を持つ医師集団を生みかねない(これだけ知っていればこれ以上勉強する必要はない)」というベクトルを生みかねない。
といったデメリットが生じうる。
一見効率が悪いように見えるが、問題(過去問)演習により医師国家試験の全体像を把握し、自らの実力と突き合わせながら勉強することで、効率よく、また危なげなく国家試験対策ができる。
ということです。その他、ビデオ講座の良い活用方法も紹介していますので、是非元記事を御覧ください。
医師国試問題演習の基本
問題演習の重要性をご理解いただいたところで、オススメの演習方法を紹介していこうと思います。
問題集
問題と解説があるものなら何でも結構だと思います。
筆者としては、言わずと知れた国家試験問題集「クエスチョンバンク」がオススメです。
皆が使っているからではなく、オンライン版の機能が非常に便利だからです。(後述します。)
演習の流れ
基本的な演習の方法は単純です。
問題を1題解く→復習する→問題を1題解く→復習する→・・・
のサイクルをとにかく繰り返すこと。
とにかくINPUTとOUTPUTを交互に繰り返すということです。
ここで注意していただきたいのは、前知識はCBTレベルで十分ということです。
国試対策を始めるにあたって、
- 「まずは参考書を通読してみよう」
- 「まずは映像授業を全部見よう」
- 「ノートを一通りまとめてみよう」
と律儀に国試出題範囲のINPUTから入る方が多いように思います。
もちろん各々に合った勉強スタイルはあるので完全には否定しませんが、筆者は医師国家試験においてはINPUTをしっかりやってから!と固執しない方が良いと考えています。
というのも、医師国家試験の出題範囲が広大すぎて、INPUTばかりでは嫌になってしまい勉強が続かないのです。
問題を解きながら、「自分には何の知識・理解が欠如しているのか」という問題意識を持った上で、解答解説や参考書・教科書を利用して周辺知識を抑えていく方が圧倒的に効率が良いのです。
演習上の工夫・注意
ここまでは当たり前のことを述べてきましたが、以降、筆者が医師国試の問題演習上注意したことを紹介します。
問題演習のポイント
CBTを終えられ、医師国家試験の問題に初めて取り組まれるような方は特に注意していただきたいことは、「とにかく一周やってみて全体像を掴む」ということです。
一つの問題から学ぶべきことが「10」あるとして、初学の段階で一回問題を解いて「10」を勉強するのは不可能です。
一問から全てを学ぼうとすると必然的に時間がかかりますが、これが過ぎて問題演習が嫌になって継続できなくては元も子もありません。
これに加えて、医師国家試験の全体像を把握していない段階で、部分にフォーカスするのは効率が良いとは言えません。
一周目の問題演習においては、学ぶべき「10」の知識のうち、ストレスなくできる分を学び取りながら、全体像の把握に務めるべきです。
全体像が見えてきたところで、それを元に分野・問題ごとに力加減を考えながら二週目以降に取り組みます。
チェックシートの利用
学ぶべき「10」の知識を何周かかけて頭に入れていくというプロセスはご理解いただけたかと思いますが、「これでは時間がかかりすぎる」と思われる方も少なくないでしょう。
そこで重要なのが「チェックシート」です。
具体的に考えましょう。
一周目で実施した問題の到達度として、
「問題はもちろん正解。解説に記載されている事項まで自分にとっては当たり前の知識。この問題はもう大丈夫。」
という類のものから、
「自力で解答するのは難しいどころか、解説を読んでも理解できない」
というレベルの問題まで様々だと思います。
「もう大丈夫」な問題をこれ以上演習するのは、記憶を濃くするメリットよりも時間をロスするデメリットの方が大きいでしょうから、二週目以降の演習では避けたいものです。
このような形で、二週目以降は演習する問題をどんどん絞っていくことをオススメしますが、各問題、前回の演習でどの程度の到達度だったかをいちいち覚えていられません。
というわけで、各問題の理解・到達度を書き残しておくチェックシートを作っておくことをオススメします。
ちなみに、QB(クエスチョン・バンク)のオンライン版では、各問題に対して、「◎」「◯」「△」「✕」を登録しておけるようになっており、これを「チェックシート」として代用できます。(この点で医師国家試験の問題演習にはQBがオススメなのです。)
具体的には、
- ◎:もう次以降演習する必要のない問題
- ◯:あと一回演習したらもう大丈夫かなぁ〜な問題
- △:自力で解答できなかったけど、解説を読んだら理解できた問題
- ✕:解説を読んでも理解が十分でない問題。
のような形で割り振り、次以降の演習時間短縮に活用します。
大切なのは、「単に解答の正誤で分類するのでなく、その問題で主題として問われている知識の定着度で分類していく」ということです。
我々の目標は「その問題自体に正しく解答できるようになること」ではなく、「その問題の背景知識を理解し、別の形で問われても正しく解答できるようになること」です。
演習の到達点(最終目標)
最終ゴール・到達点は、「全ての問題を◎にする」ということです。
ここでいう「全ての問題」としての最低ラインは「書籍版のクエスチョンバンク」に収録されている全ての問題で良いと思います。
一方で、QBオンラインでは、過去10年分の医師国家試験の問題全てが収録されている(これもQBのすごいところ)ので、余裕のある方は過去10年分の全ての問題を演習対象とするのもアリかもしれません。
そうなるには、✕・△・◯の問題について繰り返し演習し、◎に格上げしていくプロセスが必要です。
ここでも注意していただきたいのは、✕の問題をいきなり◎にしようとする必要はないということです。解説を読んでもわからないならわからないでスルーすれば結構だと思います。
というのも、他の△の問題を◯に、◯の問題を◎にと格上げしていく段階で、知識がついてきて、自動的に✕の問題が△になったりするからです。
とにかく「一周で」とか「できる限り少ない問題数で」と思ってはならないのです。
このように申し上げると。「相当時間がかかるなぁ」と思われるかもしれません。
実際、時間はかかります。
が、大変なのは一周目。全体像が把握できているので、「ここは時間をかけて」とか「ここはまた今度でいいや、てきとーに」なんて力配分ができるようになり、二週目以降はぐんと演習速度がアップしていきます。
演習を重ねるほどに、自分の知識がついてきたことを実感でき、演習自体が楽しくなってくるはずです。
以上の問題演習については、下の記事も参考になると思います。
まとめノートの利用
さらに演習効率を高める手段が、「まとめノート」です。
学んだことをまとめていくことで、適宜復習でき、記憶定着を図ることができるのは言うまでもありません。
また、演習効率という意味でも大きな役割を果たします。
誰しも、
「これ前に勉強したはずなのに、もう忘れてる・・・調べ直しじゃん・・・」
なんて経験があるはずです。「どこの本から引っ張り出してきたっけ?」みたいなところからはじまって、「ああそうだった、そうだった」となるわけですが、これをやっていては確かに演習に時間がかかります。
というわけで、一度調べた知識、理解したことは、その思考過程も含めてまとめノートに書き残しておくことをオススメします。
忘れてしまったら、一から調べ直すのではなく、そのノートを見れば済むわけです。
まとめノートについてのポイントは、以下の記事に詳しく記載しています。
付け加えてコメントがあるとすると、筆者としてはスクリーンショットはあまりオススメしません。
そもそも著作権的にどうかという問題もありますし(個人利用だからOK?詳しくないのでわかりません。)、ノートが膨大になって検索をかけてまとめを探すようになったとき、画像では文字を認識してもらえません。
Evernoteで課金すれば画像内の文字列も検索できます。筆者は奮発してこれを使っています。Evernote登録はこちら(1ヶ月間無料でPremiumを体験できます)。
「どういうことをまとめているか」というのもよく尋ねられるのですが、筆者は自分用のイヤーノートを作るイメージを基本にしています。
そこに病院実習などで得た断片的な知識も組み込んでいくのです。
また、高学年になるにつれ、「初期研修」でも使えるノートを作るように意識しています。ここまでの積み重ねで、大体の疾患や症候についてのページがあるので、これに実習や書籍から得た実臨床に生きる知識も付け加えていくのです。
最終ゴール
この記事をここまで読んでいただいた方に最も伝えたいことは
「医師国家試験はゴールではない」
ということです。
冒頭お伝えした通り、昨今の医師国試対策として「周りと同じことをやっていれば大丈夫」という傾向が顕著になりつつあります。
繰り返しになりますが、筆者「周りと同じことをやっていれば大丈夫」という姿勢は「それ以上のことは勉強しない」という考えに至りうるだと思っています。
医師になってから「必要以上はやらない」という国試対策の姿勢を継続すると、必ずどこかで痛い目に遭わされるように思えてなりません。
もちろん医師となる上で最低限要求されている知識を持つ証明として、「医師国家試験に合格すること」は大変重要ですが、それをゴールと考えるのではなく、医師となってからを見据え、リミッターなしに勉強することはもっと大切なのではないでしょうか。
そのような勉強をしていれば医師国家試験は不安なく、ラクラク通過できるはずです。
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