「家庭教師」や「個別指導」は学校定期テスト対策から受験対策まで幅広く対応する教育方法のひとつとして確立されています。
高校生として大学受験を経験し、現役医学部生として予備校等の教育機関において就業している筆者の視点から、家庭教師・個別指導を中心として、その選び方について考えを述べたいと思います。
家庭教師・個別指導の目的を明確に
家庭教師を雇ったり、個別指導を受けるにあたり、最初にすべきことは「目的をはっきりさせること」です。
最もNGなのは、漠然と「成績不振」を理由に家庭教師や個別指導を探すことです。
「成績不振だからとりあえず先生にみてもらおう」という曖昧な目的では、生徒個人のニーズに合わせて指導を受けられるという家庭教師や個別指導のメリットを活かすことができませんし、指導側としてもその内容が漠然とならざるを得ません。
例えば、「〇〇大学に合格したい」という目的は、具体的にみえてかなり曖昧なニーズです。
より詳しくお話を伺うと分かるのですが、大抵の場合、「とにかく〇〇大学に合格したいんですが、基礎からなってないので叩き直してください」と漠然としたお願いに移行することが多いのです。
ここでいう「具体的な目的」とは、
「〇〇大学に合格したい。英語の配点が高く、中でも長文を読むのに時間がかかっている。英単語は自分で覚えるので、文法を基礎から参考書に沿って授業形式で教えてほしい」
「〇〇大学に合格したい。過去問を解いているが、解説の内容すらわからない段階なので、これを噛み砕いて説明してほしい。」
「数学が苦手で、学校の授業についていけない。予備校に通っても同じことの繰り返しだろうから、参考書に沿ってマンツーマンでわかるまで授業内容を教えてほしい」
これくらいはっきりした目的があってはじめて、高い給与を支払って、マンツーマンやそれに近い家庭教師・個別指導で先生を雇う意義が生まれると思うし、目標も立てやすいです。
「オーダーメイド」の真の意味
確かに、少数指導の中で目をかけてもらうことが家庭教師・個別指導のメリットです。
「とにかく勉強が手に付かないから人一倍目にかけて教えてほしい」というニーズであれば、確かに家庭教師・個別指導の活用を考慮に入れるべきだと思います。しかし、実際の成果を視野に入れた指導内容に目を向けると、少人数で面倒見よくしてもらったから必ずしも良いアウトカムが得られるとは限らないのです。
家庭教師・個別指導はオーダーメイドだから、とりあえずお願いすれば手広く対応してもらえるという期待は大抵裏切られるのです。
例えば、「現役医学部生が教える」ことをウリにした家庭教師や個別指導を見かけますが、「自分が目指す医学部生が先生をしてくれるんだからとりあえずお願いすれば基礎から始めて良い方向に導いてくれるだろう」という考えは早計です。
難関入試を突破した現役医学部生だからといって、難しいことを噛み砕いて教えるのが上手とは限りません。むしろ、「天才タイプ」で受験を突破した医学部生が一定数存在し、「何でこれが分からないのか分からないんだけど・・・」という状況に陥ることも少なくありません。
一方で、こういう先生は、「授業は別にそこそこで良いから、とにかく難関を突破して医学部に通っている人と繋がりを持ち、経験に基づいた勉強方法などを教えてもらったり、医学部の話を聞いたりすることを通してモチベーションを維持したい」というニーズにはうってつけの存在となるでしょう。
家庭教師・個別指導は、オーダーメイドだからこそ、最初から具体的にニーズを提示し、教師側が得意とすることとのすり合わせをお行い、そのニーズを満たしてくれると確認して初めて意味のある教育を受けられると思います。
それでもマンツーマンで指導を受けますか
では、本当に漠然と「数学の勉強の仕方がわからない」とか、「〇〇大学に合格したいが何をしていいやらわからない」とか、「テストで得点を取れない原因がわからない」といった場合にどうしたら良いのか、ということになります。
私が考える方法は3つです。
①漠然としたニーズにも応えられるプロの家庭教師・個別指導を探す
基礎の叩き上げから難関大学合格までを一手に引き受けるプロ家庭教師が存在することは事実です。
このような、家庭教師・個別指導を絵に描いたような理想的な先生はごく少数しか存在しませんが、こういった先生にめぐりあうことができたなら、目的が漠然としていても良い成果を得ることができるでしょう。
②一斉授業の塾・予備校を利用する
「勉強の仕方がわからない」「〇〇大学に合格したいが具体的に何を勉強したらよいかわからない」といったニーズは多くの生徒が抱える悩みです。
家庭教師や個別指導よりもむしろ、多数の生徒の面倒をみてきた一斉授業型の塾や予備校の方が、そういった生徒を導くノウハウを持ち合わせているということだって少なくありません。
「どう勉強したら良いか」、「自分は何が苦手で、これをどう補強していったらよいか」といったことは、最終的には自分で分析しなければならないことであって、その情報や手助けを求める先は、家庭教師でも個別指導でも塾・予備校でも同じことだと思います。
少なくとも「勉強したい」という意志があるのなら、得た情報・材料をもとに自分で勉強していけば良い訳なので、あえて面倒見の良さを求めて家庭教師・個別指導に頼る必要も薄いように思います。
③自分で解決する(推奨)
特に「勉強の仕方がわからない」というのは、正直に申し上げて、自身の甘えに他なりません。
特に中学生・高校生は、少なくとも6年以上の義務教育を受ける中で、
「学習の基本は、公式や概念を教科書や授業で勉強し、これを定着させるために演習を行うことである」
という勉強の根本原則を理解しているはずです。
この原則のもと、まずやってみて、成果に合わせて自分の目標に向けてこれをアレンジし、その成果から再びアレンジを加え、と繰り返して目標へ近づいていくことでですから、「わからない」「何も出来ない」ということはないはずです。
仮に、本当に勉強の方法がわからなかったとしても、ここで手取り足取り教えてもらえる存在が出現すれば、仮にこの存在がより良い学歴へと導いてくれたとしても、以降自ら道を切り拓く生き方をすることは難しいように思います。
「自ら道を切り拓く」「自律性を養う」という視点まで念頭に置いてくれる家庭教師・個別指導など、さらに少数となるはずです。
自ら勉強の方法を計画し、実行し、その成果に応じて軌道修正をしていく。その中で、「ここは自分ではどうにでもならない弱点だから、オーダーメイドの教育が必要だ」といった形で家庭教師・個別指導のニーズが生まれるというのが理想的な少人数教育のあり方であり、選び方であると感じています。
ここまで考えが及ぶ学習者であれば、大抵は生徒自らの力でその「どうにもならない弱点」を克服しようとし、少人数の教育に頼らずとも、その克服に成功するのもまた事実です。
【まとめ】家庭教師・個別指導の選び方
家庭教師・個別指導を利用するなら、その目的・内容を十分具体的にすることが重要です。
確かに、「勉強が本当に手につかないからとりあえず面倒をみてほしい」というニーズならわかりますが、漠然と「家庭教師にお願いすれば一から十までオーダーメイドでよく面倒を見てもらえる」という考えは早計です。
「勉強の仕方がわからない」「この教科が苦手だからなんとかしたい」といった類の問題は、まず十分自分で考え、道を拓いていく姿勢が大切であり、人に頼っていては一生その姿勢を変えることはできません。
小学生・中学生・高校生が、以上のような厳しい現実を直視することは難しいほか、筆者自身、予備校での教育に携わってきて、この厳しさと向き合わせる働きかけをすることは大変困難であると実感しています。
しかし、当人がこの「自ら道を拓くことの難しさと大切さ」と向き合うことができたとき、その将来が拓く音が聞こえるのもまた事実です。
そして、自ら勉強の計画、実行、修正を行っていく中で、「ここは自分ではどうにでもならない弱点だから、この部分をこの方法で教えてもらいたい」と具体的なニーズを提示することができたとき、はじめて家庭教師や個別指導を有効に選び、活用することができると思います。
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