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医学部は理系学部ではない!?

医学部
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(※この記事は、シリーズ「医学部医学科の合格者に告ぐ。」の一部です。)

医学部は一応、というかもちろん理系学部でありますが、

「文系学部なのか!?」

という錯覚に取り憑かれることが幾度となくありました。

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医学部は理系?文系?

結論:もちろん理系です!

医学部はもちろん理系学部です。

「医学」はその対象を人体とする、自然科学です。

科学とは、

 自然や社会など世界の特定領域に関する法則的認識を目指す合理的知識の体系または探究の営み。

実験や観察に基づく経験的実証性と論理的推論に基づく体系的整合性をその特徴とする。

研究の対象と方法の違いに応じて自然科学・社会科学・人文科学などに分類される。

狭義には自然科学を指す。 

(大辞林 第3版より)

とのこと。

医学は基礎医学、臨床医学、社会医学と分類するのが一般的なのですが、今回は臨床医学にフォーカスしてみます。

臨床医学がどのような学問かを考えると以下のようになるでしょうか。

 

  • 生体機能の正常と異常(=疾患)についての知識の体系。
    • 特に、疾患の疫学、症状、検査、診断、治療、予後に関する知識。
  • 以上の知識は、経験的知識や論理的推論に基づく。
    • 個々の勝手な経験や憶測ではなく、科学的方法に基づかなければならない。
      • 測定・定量して数値として証明できるか?
      • 方法が明記されていて、さらに他者が再び同じ方法で行ったとしても同じ結果が出るか?
      • 統計的にはっきり差があると証明できるか?
      • 論理的な整合性のもとに行われた結果か? など

特に、最近では「Evidence Based Medicine」といって、個々が経験で診療にあたるのではなく、上記のような方法で科学的に証明された論拠のある診療を行うことが重要視されています。

医学は立派な科学です。

しかし実際は・・・

筆者は覚えることが苦手で、高校時代も比較的論理的な思考が通用し、覚えることも少なくて済むとされる地理を選んだし、数学の公式も、汎用しないものについてはいちいち導くことで用いていたくらいでした。

そんな人間が医学部に入って一番驚いたのは、とにかく覚えることが多いのです。

もちろん科学ですので、論理的な思考は必要です。

しかし、物事を考えるためにはある程度の基礎知識が必要です。簡単な計算のするのにも、+、ー、÷、✕などといった演算記号の意味を知らなければ話が始まらないのと同じです。

この「基礎知識」にあたる知識が、とにかく多いのです。

体の中で何が起こっているか考えるためには、解剖や生理学の膨大な知識が必須になるのは想像がつくと思います。それぞれの部位や現象の数だけ専門用語も存在することになります。これらを低学年の間に徹底的に勉強するのです。

 

さらには、医学の世界にはいくら考えてもわからないことがごまんと存在します。とくに臨床医学ではそういうことにたくさん遭遇しました。

例えば、「イソプロテレノール」というお薬は、「β1受容体」と「β2受容体」というスイッチに作用し、それぞれ「心臓を頑張らせる(収縮を強め、心拍数を上げる)効果」と、「全身の血管を緩める効果」を持ちます。

ではこの薬を使うと血圧はどう変化するでしょうか。

 

心臓を頑張らせるのだから、血圧は上がる?

でも血管を緩める血圧は下がる?

どっちだ!?!?

 

ということで、いくらこの薬が働く仕組みを知っていて、それをもとに考える素地があっても、投与してみた人や、その結果を知っている人でないとわからないことも多いのです。

 

ちなみに、イソプロテレノールを投与すると、収縮期血圧(上の血圧)は上昇し、拡張期血圧(下の血圧)は低下し、全体として平均血圧は低下することが一般的のようです。

 

また、「イソプロテレノール」という名前を出しましたが、薬の名前を覚えなければならないのも大変なことの一つですね。

その他、疾患ごとの特徴的な検査所見なども、いちいち考えていては日が暮れることがたくさんあります。

例えば、心臓のこの病気では心電図上こんな特徴が出るよーというのがたくさん存在します。もちろん疾患の仕組みを考えれば説明のつくことが多いのですが、これをいちいち考えていたのでは日が暮れてしまいます。また、「この病気はこういう病態だから検査ではこういう結果になるはずだ!」と推論できない検査所見もたくさんあります。

 

「もちろん理屈も通るのだけど、とりあえず覚えないと始まらない、とりあえず覚えてしまったほうが都合が良い」

という知識がたくさん存在するのです。

 

そんなこんなで、

「自分は文系学部に入学してしまったのか!?」  

と錯覚を起こしたことが幾度となくあった5年間でした。

どう乗り越えるか

まずは「とりあえず覚えなければどうにもならないこと」は腹をくくって覚えるしかないです(笑)

覚えられないものはゴロを作ったりして工夫しました。

また、「とりあえず覚えないとどうにもならないこと」も、覚えてから勉強しているうちにウラにある理屈を理解することができたりしますので、論理的に考える習慣を放棄しないことも大切です。

一度勉強したことや、考えを整理したことは、後から復習しやすいように整理して一つのノートにまとめて残しておくと良いと思います。

後で忘れて「あれ、なんだっけ!?」となっても、そこを見れば自分の勉強した知識が体系的に整理されているように工夫したノートを作っておくのです。

詳しいことは以下の記事を参考にしてみてください。

【医学生の知識整理術】まとめノートのススメ
筆者が医学部に入って最も驚いたことのひとつは、「とにかく覚えることが多い」ということです。 基礎系の科目の試験もそうだし、CBTでも実習でも国家試験でもとにかく「知っているか?覚えているか?」と...

まとめ

「もちろん理屈も通るのだけど、とりあえず覚えないと始まらない、とりあえず覚えてしまったほうが都合が良い」という知識が膨大に存在するのが医学部の勉強の特徴です。

そして、これに伴い、「覚えること」に重点をおいていると、医学が科学であることを忘れてしまいがちであることも、医学部の勉強で気をつけなければならない点です。

ここは文系学部かよ、というツッコミを入れたくなるときもたくさんあると思いますが、是非それに圧倒されることなく頑張ってください。

(※この記事は、シリーズ「医学部医学科の合格者に告ぐ。」の一部です。)

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