(※この記事は、シリーズ「医学部医学科の合格者に告ぐ。」の一部です。)
医学部生活6年間のQOLを最も左右すると言っても過言ではない部活・サークル選び。
ここだけは医学部合格・進学の盛り上がる気持ちを忘れて冷静に判断していただきたいところです。
今回は、充実した医学部生活を送るために部活・サークル選びで失敗しないための具体的なポイントを紹介します。
良い部活・良いサークルとは?
私にとって良い部活・サークルとは、
個人の価値観の多様性とコミュニティとしての協調性を両立している団体
であると考えています。
医療者として働く中で、様々な職種と関わり、患者さん・家族を含めて周囲の人たちの価値観を尊重する。そうでいて、目指す最終到達点はしっかりと共有する。
このような環境を目指すことが、将来医療現場で働く上でも重要です。
みなさんも、部活・サークル選びにおいて、自分の価値観にあった部活を見つけることで、大学生活をより豊かにできるかと思います。
一方、右も左もわからない状況で部活を選ぶ新入生にとって、ピットフォールがいくつか存在するのも事実です。
ちょっと筆者寄りの意見が含まれるかもしれませんが、そのあたりを紹介していこうと思います。
部活・サークル選びのポイント
以下に、筆者が考える部活・サークル選びのポイントをいくつか列挙したいと思います。
競技や活動内容だけで選ばない
「高校まで○○部だったから」という理由だけで部活を選ぶのはオススメしません。
競技のレベルを向上させることも部活動に所属する大きな目的の一つではありますが、それだけで部活を選ぶと「熱量」や「雰囲気・風紀」という面で痛い目を見ることもあります。
多くが勉強メインで生きてきた部員の集まりであって、諸栓(と言ったら怒られるかもしれませんが)医学部の部活の競技レベルなど知れています。一方で、その競技に熱烈に思い入れのある部活も存在します。
自分がやりたい競技であっても、どの程度頑張りたいのかに見合った活動内容であるのかを吟味しないと、「もっと頑張りたいのに環境が整っていない」とか、「もっとゆるくやりたいのに厳しすぎる」と感じてしまう場合があります。
また、競技だけで選ぶのがマズイのは、競技内容がその部活の人間関係や雰囲気を規定しないからです。高校から大学へ世界が広くなる分、部活動には「競技」という側面以外の性質も帯びてきます。
何度も申し上げている通り、6年間の周りの人間関係を決める大切な選択ですので、「競技で選んだはいいけど雰囲気的に全然自分に合っていない」ということにならないように注意が必要です。
団体競技より個人競技?
団体競技の良いところは、一体性でしょう。皆で目標を達成したときの喜びは素晴らしいものです。
一方でその裏を考えると、部員が「部」としての目標を共有するため、個人の裁量で練習量や熱量を決めにくいことも事実です。
例えば、競技自体を成立させる必要があるため、部員を集めねばならないことの切迫性からやや強引な勧誘があったり、何らかの理由で退部・休部を求めてもそれがなかなか認められないことがあります。
もちろん団体競技であるからこそ得られる一体感は大切なことだとは思いますが、プロでもないのに与えられた方針に従って生活を成り立たせねばならないことは、大学生として勿体無いことではないでしょうか。
他方、個人競技ではそういった部全体に係る要求が強要されにくく、どれだけの競技レベルを目指すか、どれだけ練習に熱を入れるかは個人の裁量によるところが多い傾向になることは想像に難くありません。
一方、個人競技であってもリレーや得点による対抗など、団結による達成感を得られる種目は存在しますので、決して協調性・一体性を感じられないということはありません。というか、部活動だけがそれらを学ぶ場ではありません。
低学年の先輩(特に2年生)の姿をよく見る
中には前近代的な雰囲気・伝統を残しており、「先輩の言うことは絶対」などといった封建的な文化の部活動も存在します。
低学年の部員があからさまに理不尽な扱い・不当な扱いを受けている部活、封建的雰囲気や「カースト」の存在する部活こそ、そういった側面を新入生勧誘の時点で明らかにしないようにしていることも多い(別に悪気があるわけではなかろうが陰湿ではある)のですが、そういう部活は低学年の部員の様子を見ていれば案外よくわかります。
新入生が最も丁重に扱われる新入生歓迎の期間に、部内の「カースト」の最下層に位置しやすいのが2年生です。2年生が部内でどのような扱いを受けているか、生き生きと楽しそうにしているかをしっかり見極めることが大切です。来年以降はその立場に立たされるのです。
歓迎される立場にあると、そういったことに目が向きにくいことが難点ですので、「タダ飯を食いに行く」だけならいいですが、入部するつもりのある部活なら、歓迎されることに夢中になるばかりではなく、人間観察にも精を出しましょう。
「医者の世界は封建社会・上下社会、これに慣れる必要があるんだ」という意見も聞かれますが、私はそうは思いません。(このあたりのことについてはそのうち深堀りして記事にします。)
新入生同志の繋がりを持つ
新入生歓迎の期間でわかる部活・サークルの雰囲気はそれが全てではありません。
また、上述した通り、新入部員の確保のために負の側面を隠そうとする団体も存在するのが事実です。
表面上の雰囲気に騙されることのないよう、合格の余韻を忘れて客観的に観察することが大切ですが、それにも限界があります。
それを補完するのが、他の新入生からの情報です。
表面的な情報も、複数集まれば核心をついたものになる可能性がありますし、多くの新入生と仲良くしておくと、思わぬウラ情報を手にできることもあります。
もちろん先輩とコアに結びつく方法もありますが、その先輩も何らかの部活に所属していれば情報にバイアスがかかりますし、無所属の先輩と結びつくのは頻度的に難しいでしょう。
やはり同級生と仲良くしておくことが情報を集める上では効果的ですし、その後の人間関係も円滑になるでしょう。
過度な勧誘には要注意
勧誘が熱心すぎる、過度・強引に感じられた場合には要注意です。
本当の意味で人の集まる部活は熱心な勧誘活動がなくてもそのコミュニティの居心地の良さから人が集まります。
一方で、四方を囲まれるような強引な勧誘をする部活は「部員を集めないと」という本質的でないエネルギーに駆動されている点でそもそも活動が歪んでいるし、先程述べた通り、部の「部員を集める」という方針が部内全体に求められている上、それに従わなければならないという雰囲気があるのかも知れません。
「来る者は拒まず、去る者は追わず」で、穏やかに勧誘している部活の方が、多様性や個人の価値観を尊重する良い部活である可能性が高いのではないでしょうか。
部費を聞いて満足しない
部活に必要な資金を確認する上で、「部費はいくらですか〜?」という質問はよろしくありません。多くの場合、「部費」には遠征費や合宿の宿泊費、競技に必要な道具代は含まれていません。場合によっては、活動場所の利用料金等も部費とは別会計で計上し、部員同志で出し合っている可能性もあります。
「お金がかかりすぎているな」と感じている先輩部員も、「入部してほしい」という気持ちが強く働いて、しっかり詰めないと細かい金額を教えてくれない場合があります。
「1年にかかる費用はどれくらいですか?」とか、「入部するにあたって必要なものを揃えるのにどれくらいの費用がかかりますか?」と、具体的に質問することが大切です。
活動量をイメージする
9時から16時くらいまで大学の授業がある想定のもと、自分がその部活・サークルに所属することになったら週何日、何時間の活動時間になるのか、それは自由参加なのか強制的なものなのかをリサーチし、自分の生活とともにしっかりイメージしましょう。
大学に合格した今、「何でもできる」という誇大妄想を抱きがちではありますが、実際に平常な生活を取り戻した後にその考えを後悔することが多いです。
平時の生活に戻ったとき、自分は何を大切にしたいのか、その上で、部活動にはどれくらいの重きをおきたいのかをしっかり考えましょう。
受験勉強から開放され、学びたいこと・やりたいことは「部活」だけではないはずです。
「入部しない」も大いにアリ
ここまでは何かの部活・サークルに入部する前提のようなお話をしてきましたが、「入部しない」という選択をすることも十分にありえると思います。
確かに部活・サークルに所属していることのメリットも少なくありませんが、かといって所属していなければ大学で勉強できないわけでもないし、卒業できないわけでもありません。
「医学部の学生のほとんどが何らかの部活に入っている」という雰囲気から新入生が入る部活を選ぶ大学が多いようですが、別に入部しなければならないわけではないことは常に念頭に置くべきです。
少なくとも、自分に合った部活が見つからなければムリにどこかの部活に入部する必要はないし、新入生でなくたって「入部したい」と思ったら入部すれば良いだけです。それが認められない部活なら入る価値はありません。
ムリに選んで「やっぱり向いてない」と退部することのほうがエネルギーが必要だし人間関係の軋轢も生みやすいでしょう。
まとめ
部活・サークル選びのポイントをいくつか列挙しました。
個人的な偏見も混じっていることは承知の上ですが、医学部6年目の率直な意見です。
とにかく、
合格の余韻が薄まり、平時の生活を取り戻したときに、自分が何を大切に学生生活を送りたいかを冷静に考えた上で、雰囲気の合った部活を見極める
ことが大切であると思います。
それができないなら入部を見送るのも一つの選択肢です。
(※この記事は、シリーズ「医学部医学科の合格者に告ぐ。」の一部です。)
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