筆者はUSMLE(米国医師国家試験)のSTEP1(基礎医学分野)、STEP2 CK(臨床医学分野)に合格しています。
その視点から、医師国家試験対策について
「USMLEの対策が医師国家試験対策につながるのではないか?」
という点について考え、お伝えしていきます。
USMLE合格者の視点でみた医師国家試験対策は、他ではあまり語られていないことと思います。
この記事にたどり着き、実践してくださった読者の皆さんには、「医師国家試験対策はもちろん、今後ますます重要になるであろう「医学英語」についても優位に立っていただけるのでは」と考えていますので、是非最後まで読んでいってください!
USMLEってなんだ!?という方、以下の合格体験記に説明がありますので御覧ください!
また、この記事では、「国試全体の対策としてUSMLEの勉強をおすすめしています。「国試をすぐに控えていて、<英語問題のみ>を手っ取り早く対策したいんだ!」という方は下記記事の方を参考にされると良いと思います。
医師国家試験:今後の傾向
第113回医師国家試験を解いてみた記事についても記載しましたが、
つい数年前までの国家試験はいわゆる「重箱の隅をつつくような問題」がたくさん出題されていました。例えば一生のうちで一度も出会わない医師もあるであろう遺伝性疾患に出現する症状など。
- それ、実臨床で覚えることにそれほど意味はないし、仮に必要になったとしても調べる余裕が十分あることじゃない?
- 臨床の場で知っておくべき実践的知識など、他にもっと問うべきことがあるんじゃない?
という問題が頻出だったんですね。
医師国家試験受験予備校や過去問の解説書などが充実するようになり、受験生のレベルが年々高くなってくる中で、成績をばらつかせるために問題を難しくする必要があったのでしょうか。
ところが、昨今の医師国家試験ではうってかわって、実臨床で遭遇しうる状況に対する適切な対応を問う出題が激増しています。
早速例題を一問。
【113E 48】
23歳の男性.陰茎の潰瘍を主訴に来院した.
現病歴:1週間前に陰茎に潰瘍が出現し,次第に拡大するため受診した.潰瘍部に疼痛はない.頻尿や排尿時痛もない.
既往歴:14歳時に肺炎球菌性肺炎.アンピシリン/スルバクタム投与後に血圧低下と全身の皮疹を認めた.
生活歴:喫煙は20本/日を3年間.飲酒は機会飲酒.不特定多数の相手と性交渉がある.
現症:意識は清明.身長170cm.体重74kg.体温36.3℃.脈拍80/分,整.血圧128/68mmHg.呼吸数12/分.心音と呼吸音とに異常を認めない.腹部は平坦,軟で,肝・脾を触知しない.神経診察に異常を認めない.下腿に浮腫を認めない.陰茎に潰瘍を認める.
検査所見:赤沈32mm/1時間.血液所見:赤血球418万,Hb 13.3g/dL,Ht 42%,白血球9,900(桿状核好中球14%,分葉核好中球66%,好酸球2%,好塩基球3%,単球9%,リンパ球6%),血小板20万.血液生化学所見:総蛋白7.6g/dL,アルブミン4.2g/dL,尿素窒素20mg/dL,クレアチニン1.0mg/dL,Na 137mEq/L,K 4.2mEq/L,Cl 105mEq/L.免疫血清学所見:CRP 3.2mg/dL,抗HIV抗体スクリーニング検査陰性,尿中クラミジア抗原陰性,RPR 32倍(基準1倍未満),TPHA 80倍未満(基準80倍未満).
どうでしょうか。
梅毒の診断は簡単につきますね。
はい、ペニシリン!といきたいところですが、
14歳時に肺炎球菌性肺炎.アンピシリン/スルバクタム投与後に血圧低下と全身の皮疹を認めた.
の一言。(しれっと書いてあるので気づかずペニシリンを選んでしまった受験生も多いと聞きますが、問題はそこではありません。)
同じβ-ラクタム系のセフェムやカルバペネムは除外するとして、キノロンかテトラサイクリンかどっちだ!?!?と割れたようです。
答えはeのテトラサイクリンなんですが、知らなければなんとなくで解くしかありません・・・
「いつでも第一選択薬が使えるわけじゃないんだから、代替治療まで押さえておいてね」という出題者からのメッセージを感させる1題でした。
この問題に代表されるように、実臨床の場では教科書で勉強するような「典型」なんてほとんどないと言っても過言ではありません。
非典型的な現病歴、非典型的な既往歴、非典型的な症状、非典型な病型、非典型な治療・・・と「非典型」の連続です。
ところが、「非典型の典型」なるものが存在するのも事実です。
上述の問題を例にとると「第一選択薬は使えないから代替治療を考えなければならない」という状況は非典型的ですが、そのような状況には多々遭遇するという意味では典型であるということですね。
今後の医師国家試験では、かつてよく出題された重箱の隅をつつくような「非典型そのもの」の出題は減っていき、上記に述べたような「非典型の典型」に関する出題が増えるのではないでしょうか。
その他、
- 治療(薬剤投与など)に関する有害事象(副作用など)とその対応
- 一つの疾患としてガッツリ勉強しないものの、一定以上の頻度で遭遇する訴えとその対応(例えば結膜下出血など)
- 入院中の事象に対する対応(Fever work upなど)
- 周術期の管理(ドレーンの管理や術後の発熱など)
などなど、挙げればキリがありませんが、
「実臨床で遭遇する」
「実臨床で役に立つ」
ような知識・思考を問う問題が増えていくと考えられます。
しかも、例のごとく、各種予備校や問題集の充実によって、そういった実臨床の知識に関する受験生のレベルはどんどん上昇していくでしょうから、出題内容はそれに比例してより難しくなっていくことは容易に予想されます。
もちろん各疾患についてしっかり理解してくことは重要ですが,今後は疾患横断的な視点や,実臨床の視点も大事にしなければならないかもしれません。
まずは基礎固めから
とはいえ,向こう数年で,突然に医師国家試験の出題形式が激変するということは想定しにくいでしょう。
医師国家試験対策をしていくにあたって、まず第一には従来の王道の通り,過去問を使って,疾患ごとに知識を身に着けていくことが重要と思います。
具体的には以下の記事を参考にしてみてください。
USMLE対策もおすすめ
ところが、ある程度勉強が進んでくる(例えば「クエスチョンバンクを2周解き終わった」みたいな状況)と、
- 全体像は見えている、あとは覚えるだけ。
- 成績がある程度プラトーに達してしまった。
- このままQBを周回することに意味があるんだろうか。
- もう少し踏み込んだ勉強をしたい。
- より初期研修で活きる知識を得たい。
なんて気持ちが芽生えてくると思います。上述の通り、こういった気持ちこそ今後の医師国家試験対策では重要な視点です。
また、特に今後は医師国家試験対策の各種予備校や問題集がますます充実してくるでしょうから、比較的早期(低学年)の段階で、
「次のステップへ進みたい!」
と感じる学生も増えることでしょう。
基礎を固めた次のステージの勉強法として、例えば
「各疾患についてもっとマニアックに勉強する」
「研修医向けの書籍・レジデント本を読んでみる」
「自分の志望診療科から中心に詳しく勉強してみる」
など、色々な方法が考えられますが、比較的時間のある方には、
「USMLE STEP2 CK」の勉強をしてみることもおすすめします。
USMLEは簡単に言えば米国の医師国家試験のことで、基礎医学が出題される知識試験STEP1、臨床医学が出題される知識試験STEP2 CK、日本で言うところのOSCEであるSTEP2 CS,実際に米国の各州で診療するための最終試験STEP 3があります。(詳細は下記記事参照)
CKとは「Clinical Knowledge」の略で、STEP2 CKは臨床範囲が出題される米国版の医師国家試験と言えます。
米国では医学部の最終学年でSTEP2 CKを受験することが多いようです。米国の医学生は、臨床実習の段階で、日本の研修医さながらの働きをしているのは有名な話ですが、その彼らが受験する試験、当然のことながらより実臨床に即した問題が多く出題されることになります。
例えば、冒頭の梅毒の問題、もしも患者さんが妊婦だったらどう対応するでしょうか。
テトラサイクリンは妊婦さんには禁忌とされていますので、使いたくありません。
この場合は、第三選択薬のスピラマイシンを利用するか、もしくはペニシリンアレルギーを脱感作するという方法がとられます。
これはUSMLE STEP2 CKの対策をしていると必ず勉強する内容です。
上記例に代表されるように、STEP2 CKでは臨床現場での「非典型の典型」に関する知識を多く学ぶことになります。
試験の形式的にも、STEP2 CKの問題はほとんどが長文の臨床問題で、単に知識を問うだけの一文の問題の出題は皆無です。
加えて、実際に短い論文や薬剤の添付文章を読んで、症例に対する適切な対応を選択する問題なども出題されるなど、やはり実臨床に即した出題が意識されている印象です。
上で、今後医師国家試験が難化するとしたら、実臨床での判断を問う方向に向かうのではと書きましたが、これに対してUSMLEの勉強がうってつけなのです。
医師国家試験の対策をしていて、次のステージに進みたいと思った方、実際に受験するしないには関わらず、USMLEの対策に挑戦されはいかがでしょうか。
また、今後、日本人の人口が減少し、「外国から人が入ってくるか、自分が外国へ出ていかなければならない世の中」を迎えるにあたって、英語で医学を勉強しておくことは非常に有用ではないでしょうか。
「USMLEを題材に、医学英語を勉強する」
という気持ちで取り組んでも良いかも知れません。
なぜUSMLE STEP2 CKか?
米国で研修医として仕事をするためにはUSMLEの複数のSTEPに合格する必要がありますが、「医師国家試験対策」の発展としてUSMLEを勉強される場合には、臨床分野が出題範囲とされている「STEP2 CK」をおすすめします。
臨床現場さながらの状況設定の問題を通して、臨床判断を勉強することができます。
また、USMLE STEP1、2 CK、2 CSはどの順序で受験しても良いことになっています。はじめは受験するつもりがなくても、勉強を進めるうちに「実際に受験してみたい!」と思うこともあるでしょう。「STEP1を受験していないと、STEP2 CKを受験することはできない」ということにはなりませんので安心してください。
USMLEについて詳細をお知りになりたい方は、是非以下の記事御覧ください。
まずはFirecrackerがおすすめ
とはいえ、いきなりSTEP2 CK対策のための教材(参考書や問題集)を集めるというのはちょっと敷居が高いのではないでしょうか。
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もちろんネットでも勉強できますが、スマホアプリも利用でき、学習記録はすべて同期されます。
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「USMLE云々は置いといて医学英語を勉強したい!」
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まとめ
今後の医師国家試験の展望と対策について、筆者なりの視点で書いてみました。
まずは従来の方法で基礎を固めた後、今後出題が増えるであろう「実臨床での適切な判断を問う問題」への対策として、USMLE対策をおすすめします。
具体的には、FirecrackerなどのWebサービスを活用されると良いでしょう!
最後に、USMLEの勉強をする上での注意点。当然のことながら日本と米国では疫学や医療制度が異なります。また、産婦人科領域を中心に、USMLEと日本の医師国家試験で問われる範囲に少しズレがありますので、そういった点には注意を要します。これに関する詳細は、下記記事を御覧ください。
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